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第129話
鞄にいつも入れていた抑制剤も手元にはない。荷物ごと藍に隠されてしまったから、もし発情期が来たら薬を飲む事が出来ない。
もしも、次の発情期にフェロモンが出て藍が反応してしまったら、この身体は喜んで藍を受け入れるだろう。番にはなれないと言いながら、魂に引き寄せられて拒む事が出来ないまま項を差し出す。
藍から離れて一人で生きると決めたのに、このままでは藍の人生を台無しにしてしまう。菫と同じ結末を迎えてしまう。
ちゃんと幸せになると、菫に誓ったのに。
藍と番えなくても自分なりの幸せを見つけようと考え始めていたのに。
「家は……? 誰も認めてくれないよ?」
「認めてもらうつもりなんかない。番ったら何処か違う所に引っ越して二人で静かに暮らそう。永絆を養えるくらいの金は家とは関係なく持ってるし、永絆は心配しないで大丈夫だよ」
「……でも」
「これはもう決まった事なんだ。永絆がなんて言っても必ず番う。毎日抱いて、毎日項を噛む。番が成立するまで何回も」
永絆を愛おしく抱きしめて、藍は永絆の髪にキスを落とす。
そして項にも口付け、永絆をベッドに横たえた。
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