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第147話
あの日、紫ノ宮の屋敷を後にしてすぐ大事なものだけを持って電車に乗り込んだ。目的地があった訳じゃない。たまたま乗った電車の終点が空港だっただけだ。
そして空港で一番出発の早い便に乗った。それがこの雪の多い場所への飛行機だった。
行き当たりばったりで行動すれば誰にも行き先はバレないと思った。バレた所で藍に逢える訳じゃない。行き先は何処だって良かった。
この町に着いて直ぐに住む家を探し、一番陽当たりの良かった部屋を契約した。今まで住んでいたマンションに比べたら古くて狭い。
寒冷地仕様の二重窓が珍しくて窓を開けると冬の冷たい空気が入って来て、肺まで凍りそうな気がした。
直ぐに住み始めて最低限必要な寝具や着替え、日常品を買い揃えるとようやくホッとした。
寒冷地の住宅は寒さ対策がしっかりしているのか、ストーブをつけると部屋中すぐにポカポカと暖かくなり買ったばかりの寝具を敷いて眠りについた。
色んなことが一度にあって疲れきっていた永絆はその日、夢も見ないでぐっすりと眠る事が出来た。
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