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第148話
一人きりの生活に苦はなかった。元々、親に捨てられ一人で公園で暮らしていたのだからそれに比べれば屋根があって布団もあって暖かくて快適な部屋に住んで、栄養を考えながら食事が出来ている。
お金だって働かなくても生きていける程、たくさんある。尤も、それを湯水の如く使う気にはなれないのだが。
あとは仕事を探してその収入で生活出来るようになればいい。落ち着いたら菫の希望だった大学卒業も通信制か大検でも受けてきちんとしようと思っていた。
ほとぼりが冷めたら藤にも連絡を入れよう。携帯は水没させられたまま新しい物は持っていないから、公衆電話から掛ける事になる。そこまで考えて、携帯の登録機能に頼りきっていたから番号が分からない事に気が付いた。今の住所も知らないし連絡の取りようがない。
せめて一言、何の相談もなく居なくなった事を謝りたかった。
番になりたいと思ってくれた気持ちに感謝と謝罪を伝えなければ。
そしてそんな風に思ってくれていると知らずに藍と離れる為に藤を利用して苦しめた事を償いたい。番にはなれないけれど、何か別の方法で償いたかった。
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