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第150話
何度も藍の腕の中で抱かれながら噛まれた項。いくつもの歯型は少しずつ薄く消え始めていたのに、いつまで経っても薄くならない歯型があった。
一体それがいつ噛まれたものかなんて、永絆にも分からない。そのくらい何度も噛み跡を残されたから。
抑制剤は藍が全て捨ててしまって、あの一ヶ月半の間、一度も飲んでいない。けれど、発情期が来た感覚はなかった。
それでもこの噛み跡は、間違いなく番が成立しているから消えないのだと証明している。
永絆自身が気付かないうちに、藍と番になってしまった。
その事実に動揺して、藍に連絡を取ろうとも思った。けれど、藍が気が付いていないのであれば藍が誰かを抱いた瞬間、番は解消される。
藍の為にはこの事実を伝えない方が良いだろうと判断し、束の間の番関係を過ごす事にした。
藍と番になる夢が叶った。たとえ、永絆だけしか知らなくとも。それだけでこの先も生きていけると思った。
それなのに、永絆の前にその番が現れた。
猛吹雪の悪天候の日に、永絆の住む部屋に着の身着のままでやって来た藍はブルブルと震え今にも凍えて死んでしまいそうだった。
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