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第160話

「やっぱり、このままじゃダメだよな」  仕事から帰宅した藍が携帯を片手に難しい顔をしていた。  夕飯の準備をする手を止めて携帯を握り締める藍の手に自分の手を重ねる。 「藍……無理はしなくてもいいよ。嫌なら連絡しないで構わない」 「でも、このままじゃ籍を入れられない。産まれる前にちゃんとしておきたいんだよ」  妊娠を告げた時、藍は一瞬固まってしまった。そして一気に全身を真っ赤にして部屋の中をウロウロと歩き出し、しばらく落ち着かないままだった。  やはり突然そんな事を言われたら焦って当たり前だ。いくら番になったからといって、それとこれとは別問題。いつかそのうち、とは考えていたけれどまさかこんなに早く親になる日が来るとは思わなかった。  永絆は既に産むという答えしか持ち合わせていなかった。藍が反対しても一人で産み、育てる決心を病院の帰り道で固めてきた。  問題は藍と、藍の家族だ。  Ωを蔑視している紫ノ宮家が藍と永絆の子供を認める筈がなかった。下手をしたら無理にでも堕胎させられる可能性も考えられた。  落ち着かずに部屋をウロウロしていた藍が急に立ち止まり永絆の元まで戻ってくると、深呼吸をして満面の笑みを見せた。

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