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第161話
「男の子? 女の子? あ、名前どうしよう? ベビーベッドとかオムツとか……ああ、その前にちゃんと籍を入れなきゃいけないな! 子育てするならもう少し広い部屋がいいかな……。それで、男の子? 女の子?」
今度はこちらが固まる番だった。
まだ小さな小さな人の形にもなっていない細胞の固まりで、永絆自身、病院でエコーを見るまで実感が沸かなかった。けれど間違いなくこの中にいるのだと確認した瞬間の歓びは言葉では表せない。
「まだ分からないよ。ゆっくり考えていこう? 一緒に育ててくれる?」
「当たり前だろ、何言ってんだよ。そりゃびっくりしたけど、嬉しさのあまり何から言えばいいか分からなかっただけだから!」
まだ少しびっくりしたままで軽くパニックになっている藍が可愛くて永絆は思わず笑ってしまった。それを見て藍も照れたように笑う。
「な、ちゃんと籍を入れような? 紫ノ宮の姓が嫌なら永絆の苗字でも構わない。ちゃんと父親のとこに俺の名前書かせて」
「うん」
そんな幸せな会話をした後、早速入籍しようと婚姻届を取りに行った藍。ドキドキしながら名前を書く手が震えていた。
証人の欄に藍の職場の上司の名前を書いてもらい、妊娠発覚から二日後の藍の仕事の昼休みを利用して役所に婚姻届を出した。
しかしそれは受理出来ないと言われ、突き返されてしまった。
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