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第162話

 理由を聞くと二十歳に満たない婚姻には親の承諾が必要なのだという。  永絆はとっくに親の籍から抜かれ、菫が後見人になっていた。菫の専属の弁護士に連絡を入れると永絆には親の承諾はなくてもいいとの事で後は藍だけが問題だった。  一年待てば親の承諾が無くても二十歳になるので籍を入れる事は出来る。しかしその前に子供が産まれてしまう。産まれてから籍を入れると血の繋がりがあっても養子扱いになってしまう。それだけはどうしても避けたかった藍は何度も実家の両親に連絡を入れようとしていた。  藍と永絆が何処で暮らしているかはとっくに藍の親には知られていた。定期的に紫ノ宮家に雇われた人間が様子を見に来ているのを二人とも気が付いていた。  しかし様子を見ているだけで話し掛けてはこないので二人もそのままにしていた。  今回、妊娠がわかった事ももしかしたらもう伝わっているかもしれない。籍を入れようとして出来なかった事も。  結局、親に頼らなければいけない事が藍には悔しくて仕方がない。けれどこのままではいられない。永絆は無理をしなくていいと言うが、もう二人だけの問題ではないのだ。産まれてくる生命の為にも万全の体制でいたい。  その為には籍を入れる事は藍にとってとても重要なことだった。

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