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第172話
藍を絶対に諦めない。離さない。離れない。ずっと傍で寄り添いあって生きていく。そう強く誓ったのだ。
そして子供が産まれたら三人で慎ましやかな生活を送る。それはとても幸せで、特別な事。
「私と初めて話した時に、君は番にはなってないと言った。しかし番は成立していたのだな」
「……それは……オレもあの時は分かってませんでした。発情期が狂っていたし、番になってる感じがしなかったから」
この土地に来て番になっていた事にようやく気が付いたくらいだ。嘘をついたつもりはない。
「嘘だとは思っていない。あの時に分かっていれば君は素直にそう言っただろう?」
「もちろんですっ……。分かっていたら諦めたりしなかった!」
一ヶ月半の二人きりの蜜月を終わらせたくなんかなかった。あのまま二人きりでずっと閉じこもっていたかった。
けれど結局見つかってしまい、番にもなれなかった。それで蜜月は終わったのだと諦めるしかなかったのだ。藍の将来を思えばこそ。
「あの時……君は運命はあると言った」
「はい……」
「私は、運命ならば番になっていた筈だと言った」
「……はい」
だから運命なんか存在しないんだと否定され、その場を立ち去るしか出来なかった。
結ばれないのならば、それは運命なんかではないのだと思い知ったのだ。
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