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第175話

「藍、彼のお腹の中には私の孫がいるんだ。お互い意地を張るのはやめて産まれてくる子供の為に協力しあいたい。永絆くんの事も含めて」 「そんなこと言って、産まれたら永絆を追い出したりしないって保証は!?」 「追い出したりなどしない。子供は親の元で育てるのが一番だ。私はただ、協力がしたいんだ。そして運命の番の行く末を見守りたい」  別れさせようとしていたのに、何故そんな風に考え方を変えたのか永絆には不思議だった。  けれど彼はずっと『運命』を気にしていた。もしかしたら彼の本心はそこにあるのではないかと思った。 「……貴方は、Ωを好きになった事があるんですか?」  何の確証もない思いつきだった。  紫ノ宮の跡取りがΩを好きに、なんて事は有り得ない話だ。藍を除いては。 「……運命の番ではなかったけれど、番いたいと思った人がいたよ。しかし当時の私は未熟で親に反抗も出来ない臆病者だった。運命の相手ならば許されたかもと何度も考えた」  だから、と彼は話を続けた。少し切ない表情で。 「だから知りたいんだ。運命で結ばれた者がどうなるのか。私が諦めた過去が正しかったのかを」 「……でも……貴方が諦めたから、藍が産まれたんです。藍が産まれたから、オレは運命に出逢えた。オレは……それだけは貴方に感謝します……」  複雑な心境ではあった。  彼とそのΩの悲しい選択のおかげで今、こうして藍と幸せな暮らしが出来ている。それを感謝すればΩである自分を否定しているようで。

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