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第176話
「俺も、産まれてきて今凄く幸せだよ」
それでも藍が、こうやって笑顔で応えてくれるから。
その幸せを大切にしようと心から思う。
「藍、誤解はしないでほしいから言うが、私はお前の母親と結婚した事を後悔はしていない。家同士の政略結婚ではあったけれど、お互い思いあっていた。だから藍が出来たと知った時は嬉しくて涙が出たよ」
「泣いたの?」
「恥ずかしい話だが号泣した。そして彼女と子供を必ず幸せにすると誓った。今でも彼女を愛しているよ」
嘘偽りのない言葉は、飾らなくても心に沁み渡る。
彼がΩと悲しい恋をしたことも無駄ではなかった。全て、意味があるから出逢う。
「その彼女がお前達を連れてこいって言うんだ。自分の子供が選んだ相手を信じてやらなくてどうするんだと。Ωの血を入れたくらいで没落するのなら所詮、その程度の力しかなかったんだ、ってね」
「……母さんが……」
「私は昔から彼女には頭が上がらないんだ。永絆くん、私達は君の事を歓迎する。決して子供を取り上げたり、君を追い出したりしないと誓う。誓約書を書いてもいい」
「いえ……そんな、そこまでは……」
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