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第177話
なんとなく、永絆には分かった気がした。
藍が自分を絶対に諦めずに閉じ込めたり、ここまで追ってきたのは、両親の性格をきちんと受け継いでいるからだと。
「αの絶対的な社会もどんどん変わっていくだろう。Ωの待遇も良くなっていく。世の中が変わっていくのに、我々が変わらないでいるのは自ら首を締めているようなものだ。今が紫ノ宮にとっても、変革の時なのかもしれない」
繋いでいた藍の手が、ぎゅっと強く握られた。
それだけで藍が何を考えているか分かってしまう。
向上心の強い藍が小さな町の工場の仕事で満足出来るはずがない。今の仕事を軽視している訳ではなく、その工場がもっと成長する方法を毎日考えていたのを永絆は知っていた。
ここで燻っているのは藍のためにはならない。藍を我慢させたくはない。
「藍、オレも初めての出産で心配だから……藍が嫌じゃなかったら一緒に帰ってみない?」
「永絆……でも……」
「オレを藍の家族にしてよ」
不安が全てなくなったわけではない。紫ノ宮に迎え入れられるという事は大勢のαの中に一人で乗り込むという事だ。
いくら藍や、藍の両親が味方になってくれてもΩを蔑視する声は耳に入ってくるだろう。
その中に踏み入れる覚悟。それがあるなら、と藍の父親は念を押す。
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