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第178話

 怖くないとは言えない。きっと傷付く言葉を言われて嫌な思いをする事も多いだろう。それでも藍と一緒に居たいとそう思える。少し前なら怯えて逃げ出していた。 「藍のお母さんにも会ってみたいな。きっと素敵な人なんでしょ?」  藍の父親を簡単に言いくるめてしまえるのだから心の強い女性なのだろう。藍から母親の話は聞いたことがないが、紫ノ宮に嫁ぐ程の女性だ。茉莉花の様に芯のある性格をしている気がした。 「……母さんは、放任主義なんだ。俺が何か悪いことをしても怒ったりしない。永絆を閉じ込めたのがバレた時も何も言わなかった。俺に関心がないんだと思ってた……」 「それは違う。違うぞ、藍。母さんは、私がお前に厳しくするからその分のバランスを取る為にお前を自由にさせていただけだ。跡取りとしてしっかり育てようとする私に、それなら自分は緩く育てると言ったんだ。そうしないと藍が窮屈な思いをするからと」  紫ノ宮という家は、厳格で窮屈で古い考えの残るα至上主義の一族だという事で知られている。  藍が紫ノ宮の跡継ぎだと知った時、絶対に藍とは結ばれないと永絆は思った。その考えはつい最近まで根強く残っていた。  Ωを排除し、存在そのものを否定するαの一族に、運命の番だからといって簡単に付き合いを許される筈がない。だからこの運命は間違いなのだと何度も自分に言い聞かせていた。  それが今、自分の覚悟次第で藍の両親にも認めてもらえる関係になれるかもしれない。

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