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第180話
「俺達は、花の名前で繋がりあってたんだな……」
「うん……うん」
初めて逢った時に名乗らずに去った事も、再会してお互いの名前を知った時も、いつも花の匂いがしていた。
それは花の名前で、花の言葉で、最初から繋がっていたから。
「……父さん、紫ノ宮に帰ります、永絆と二人で。永絆と、産まれてくる子供を護るために」
「分かった。迎える支度をしておこう。いつでも帰って来なさい。歓迎する。……勿論、永絆くんもだ」
「はい……あの、よろしくお願いします」
頭を深く下げた永絆に倣って藍も頭を下げた。
二人の頭をポンと軽く叩いて、藍の父親は立ち上がるとそのまま玄関へ行き部屋を出ていった。パタンとドアが閉まるまで、二人は頭を下げたままでい続けた。
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