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第185話

「だって可愛いんだもの! いいじゃない、私だって楽しみなの!」 「それは嬉しいんですけど、赤ちゃんてすぐ成長しますよ?」 「あら、それもそうね! 次からはサイズを考えて買ってくるわね!」 「いえ、だから……もう……わかりました、ありがとうございます」  何を言っても茉莉花には通じないと諦めて苦笑すると、茉莉花は目をキラキラと輝かせた。 「私ね、本当に嬉しいの。紫ノ宮との婚約は形だけで恋愛感情なんて無かったし、貴方がこうやって認められた事で私も恋をしても諦めなくていいんだって思えるようになったの」  小さな服を胸にぎゅっと抱きしめながら、茉莉花はまだ出逢っていない誰かを想う。それは恋に憧れを抱く、普通の少女の姿だった。 「家の為、αだから仕方ないってずっと誰かを好きになる事を諦めていたけど、二人が風向きを変えてくれた。だから二人は私の恩人なの。うちの家に迷惑がかかったとか思わないでね? そんな事くらいでなくなるような家じゃないから」  その話も、もう何度も茉莉花から聞かされた。言われる度に茉莉花の芯の強さを羨ましく思う。たとえどんな事がこの先あっても彼女なら乗り越えていけると想像出来る。 「素敵な人と出逢えるといいですね」  心からそう思う。彼女の家やお金や権力なんかに振り回されたりしない、彼女自身をちゃんと見てくれる人が現れる事を。

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