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第191話

「中根には診てもらったんだろ? なんて言ってた?」 「心配しなくて大丈夫だよ。早く帰ってきてくれてありがとう」  まだ小さな子供は藍の母親が相手をしてくれている。優秀なベビーシッターもいるから、こんな時はとても助かる。 「中、入るぞ?」 「だっ……だめっ!」  永絆の拒む言葉が一瞬遅く、扉を開けて藍が入って来ようとして入り口で立ち止まる。  被っていたシーツの隙間から覗くと驚いた顔の藍が見えた。 「永絆……この匂い……」 「早く出てって!」  この部屋に充満しているのは紛れもないΩの発情フェロモンだ。番がいなければ見境なく誘惑してしまう強烈な。 「そんな事出来るわけない」  後ろ手に扉を閉めて藍がベッドに近付いてくる。慌ててシーツで全身を隠すが永絆から発せられるフェロモンはシーツ一枚じゃ塞ぎきれないほど強いものだった。 「発情期、なんだな?」 「ちが……これは……」  元々不安定だった永絆の発情期とそのフェロモンは、番った後も変わらず不規則だった。妊娠中にも発情期は起こらず、出産した後も一度も発情しないままだった。  中根にも定期的に診てもらっていたが、特に身体に異常があるわけでもなく検査をしても何も出なかった為、もう発情期はなくなってしまったのだと思っていた。

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