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第194話

「永絆……」  それでも口唇を噛む藍の頬を両手で挟んで永絆の方からキスをする。噛むのを止めさせる為にした口付けだったけれど、それはすぐに舌の絡まり合う濃厚なものへと変わった。 「ふっ、んっ……」  舌の先から痺れが走り、脳を揺らす。  熱い。ただただ熱くて、高揚していく。  永絆から発するΩの発情フェロモンが、藍のαの身体を狂わせていく。藍から溢れてくるα特有のフェロモンは、Ωの発情に反応して醸し出される。それは番同士だとより濃く、強いものへと変化する。  二人のフェロモンが混ざり合い、狂おしい程の劣情を抱かせる。 「永絆っ……」  理性を手放したい。本能に身を任せて永絆を強く抱いてしまいたい。後のことなど何も気にしないで一晩中、出来ることなら発情期の間ずっと繋がっていたい。  だけどそんな無理はさせられない。子供だってずっと誰かに預かってもらう訳にはいかない。自分の事が忙しくて、もっと子育てに協力するつもりでいたのに思うように時間がとれなくて歯痒いばかりだ。  それでも、文句も言わずに居づらい筈の紫ノ宮の家で毎日帰りを待ってくれている永絆を、もっと大切にして、甘やかして、溺愛したい。丁寧に抱いて、何度でも愛の言葉を囁いて、永絆の望む事の全てをしてやりたい。  だから理性は手放せない。本能のままで抱けば永絆の身体が辛くなる。永絆には限りなく優しく接したいのだ。

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