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第195話

 それなのに、荒い吐息の合間に永絆が囁く。 「ね……藍……。いいんだよ、藍の、好きにして……ん、あっ……。オレ、オレね……藍に、思い切り、抱かれたいんだ……」  プツリと何かが頭の中で切れた。  気が付くと永絆の着ていた衣服を剥ぎ取って、その素肌のあらゆる場所を舌で舐め回し真っ赤な痕で独占欲を印していた。  その手で触れる少し汗ばんでしっとりとした熱い肌。舌で身体中を這うと背中を逸らしながらビクビクと感じる敏感さ。  永絆の口内を掻き回す指は永絆の唾液にまみれ、強制的に開けられた口からは甘く切ない声が漏れる。  その声だけで達してしまいそうだった。  何度も抱き合った番の身体の何処を刺激したらいいのかはとっくに熟知している。その箇所をいくら攻めても永絆はいつも一本、線を引いているような反応しかしない。完全に快楽に身を委ねて堕ちてしまうのを怖がっているようだった。  それは今まで生きてきた環境が無意識にさせているのだろう。交わる事にΩとしての後ろめたさや悲しい過去があるせいで、藍の腕の中ですら理性を捨てきれずにいた。いつか永絆が心の底から安堵して、淫らに溺れて堕ちていける日が来る事を待っていた。 「あっ……! あいっ、ああっ……やぁっ……」  永絆の腰を持ち上げて露わになった後孔に口唇を寄せる。まだ触れてもいないのに既にそこは蜜で溢れ甘い匂いを漂わせていた。

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