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第202話

 これからも悲しい事や辛い事は沢山あるだろうし、それはΩだからだけではない。生きていくには誰もが多少の傷を負う。それでもまた傷を癒し、癒してもらいながら生きていく。 「貴方の生き方は、幸せでしたか……?」  その答えは永遠にわからない。彼は答えをくれないまま去ってしまったのだから。  でもそれでいいのだと永絆は思う。彼には彼の生き方、愛し方があった。それを最期まで貫いたのだ。 「オレは、オレの幸せを生きていきます」  彼に背を向けて丘を下りていく。後ろを振り向く事はしなかった。振り向かなくても、彼が優しく見守ってくれているのを感じられたから。  芝生の上で座る子供の前にしゃがむと、嬉しそうな顔で作っていた小さな花束を差し出した。 「くれるの?」  もみじの様な手から花束を受け取ると、弾けそうな笑顔で喜ぶ子供。 「ありがとう、大切にするね」  自分の身体から産まれてきた小さな生命の温もりに涙が出そうになった。  この子がαでも、Ωでも、なんだって構わない。かけがえのない愛しい我が子がただ健やかに成長してくれるなら、それ以上の幸福はない。  傍で見守る番を見ると、彼も幸せそうに顔を綻ばせていた。  いつでもそこに、見守ってくれている存在がある。それがこんなにも心強く頼もしく思える。

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