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第7話

 自分だって番う事を拒否した。運命や性別に振り回されたくなかったから。  でも心の何処かで藍の事を信じて求めていた。藍と番う事を夢見て、願っていた。  自分勝手な考えで浮かれていた所為でどん底に落ちてしまった。  こんな事なら再会しなければ良かった。  運命の番になんて逢わなければ良かった。  動けない身体を床に倒して、床から伝わる冷たさに疼く身体を冷ました。それでも中々冷めない熱に悔しくて涙が止まらない。  知り合う前は発情期が来ても自分で一、二度欲を吐き出す行為をすれば治まったのに今ではそれだけじゃ満たされない。いつもいつも番の事を考えて自分を慰めるようになっていた。  今はその行為すら億劫に感じて、自分から発せられるフェロモンで部屋が充満していくのをぼんやりとしながら声もなく泣き続ける事しか出来なかった。  どのくらいそうしていただろう。  涙を流し過ぎて喉がカラカラに乾いてしまっていた。水分を摂りたいけれど、まだ身体は動かない。このままここで干涸らびてしまうのもいいかもしれないと考え始めた頃、寝室のドアをノックする音が聞こえた。  ドアが開いて足音が近付く。藍では無いことは見なくてもわかる。彼からは常に甘い花の匂いが漂ってくる。それはきっと番である永絆にしかわからない匂いだ。 「起き上がれるかな?」  永絆の目の前に座り声の主が永絆を覗き込む。  涙で滲む目を声の主に向けると、黒縁メガネとマスクをしていて、さっきまで寝ていたかのようなボサボサの髪をふわふわ揺らしながらメガネの奥の垂れ目を細めた。

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