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第11話
マンションを後にしてから、中根から預かったメモに書かれていた連絡先に電話を掛け無事に帰宅した事を告げると、一度しっかり検査をしてみないかと言われた。
直ぐには返事が出来ずに暫く考えさせてくれと頼み電話を切った。
どんな検査をしたいのかは知らないが、今の永絆には『藍に触れる事が出来ない』という事実だけでもう充分だった。
その日は大学を休み、泣き腫らした目をひたすら冷やした。
藍への感情もこのまま冷えて凍ってしまえばいいのにと思いながら。
昼過ぎに携帯が鳴ってディスプレイを見ると知らない番号からだった。恐る恐る電話に出る。
『永絆?』
藍の声が携帯から聞こえてきて、心臓が止まるかと思った。
『もしもし?』
驚いて何も言えずにいた永絆は慌てて「もしもし」と返事をした。
「なんで藍がこの番号……」
『中根から聞き出した。薬は貰ったか? ちゃんと家には着いたのか?』
「う……うん。大丈夫」
声が少しイライラしている様に感じて戸惑った。何か怒らせるような事をしただろうかと。
『……永絆の体質の事、中根からちゃんと説明して貰った。今は辛くないか?』
「うん……大丈夫」
イライラしていた声が急に優しくなる。それだけで胸がキュンと痛くなる。
『明日から、大学の送り迎えに車を出すからそれを使ってくれ』
「え? なんで? 大学までそんなに遠くないし車って藍の送迎のだよね? そんなのいらないよ」
あんな高級車、乗っていても落ち着かない。それに電車を使えば三十分もあれば行ける距離だ。
『初めて逢った時みたいに突然ヒートを起こすかもしれない』
「あれはっ……」
あの時は運命の番に出逢ったせいでそうなっただけで普段は発情期が来る日を予測して外には出ないようにしている。そのくらいの自衛はΩなら当然の事だ。
『大学だって一人で行動させたくない。出来るならオレが傍に付いていたい。でもそれは無理だから……せめて永絆が誰かに犯されたり番わされたりしないように少しでも何かさせてほしい』
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