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第26話

 中根はやはり鋭いなと永絆は思った。部屋に飾られている物を見ただけで永絆の趣味ではない事を見破ったのだから。 「間借りしてるんです。大学卒業までの間」 「そうなんだ? 高そうな部屋だよね」 「そうですね。紫之宮家には到底及びませんがお金には不自由してないと思いますよ」  コーヒーを一口、口に含む。苦味が口内に広がって、何だか責められている気分になった。 「それで、何か話があったんじゃ?」  何の用もないのに中根が来るとは思えない。藍に頼まれたのか、独断で来たのか、どちらにしても会いたい人物ではなかった。 「うん、そうそう。やっぱり検査しないかなーって思ってね」 「それは断った筈ですけど?」  猫舌なのか、さっきからコーヒーの入ったカップを持ったまま何度もふぅふぅと息を吹きかけて冷ます中根は、こちらを見る事もなくコーヒーを冷まし続けた。 「うん、でもね? 近寄るだけでヒートを起こすって大変じゃない? 検査して何か判ればその症状、治せるかもしれないよ?」 「別に藍に近付かなければ問題ないです。匂いで近くに居るのは分かるし避けられるんで」  会いたくなくて避けているのだから、藍の匂いに敏感な方が助かる。近付けない理由にもなる。避け続ければ藍も諦めるだろう。 「ホントにそれでいいの?」 「何でそんなこと訊くんですか? 中根さんは紫之宮家の主治医なんでしょ? オレみたいなΩが藍を誘惑したら問題になるんじゃないですか? それを知ってた中根さんもタダじゃ済まなくなるでしょう?」  実際、誘惑したって藍の理性が勝ってキスすら受け入れて貰えなかった。ヒートを起こしているのに部屋に一人にされた。藍が永絆の誘惑に負ける事はきっとない。理性を飛ばす前に引き剥がして去ってしまう。

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