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第28話

「父親は馬鹿馬鹿しいって貶すけどね、藍が今は協力してくれてるから強く反対は出来ないんだ」 「藍が……?」 「君に初めて逢った後すぐに僕に連絡が来た。研究に力を貸すから自分の番の為に成果を出してくれってね」  喉の奥が何か詰まったように苦しくなった。  まだ再会する前から藍は自分の事を色々と考えてくれていた。それも、「自分の番」だと言って。  それなのに何故、藍は番になるチャンスがあったのに項を噛まなかったのか。やはり再会してから考えが変わってしまったのかもしれない。 「オレは……藍に拒まれてます。だから、番になる事はないです。オレも番を作るつもりは無いので」 「……それは、きちんと藍と話し合ってそう決まったの?」  永絆は首を横に振った。ちゃんと話をした訳ではない。何となく雰囲気でそう察しただけだ。 「藍と話したくても顔を見る事も出来ない。距離を取らなきゃヒートになる。壁越しの会話じゃ何を考えてるか分からなくて、言いたくもない事を言ってしまう……」  もっと素直に話したいのに、藍が今どんな表情をしているのかと考えると不安になってしまう。不安になると悪い事ばかり思い浮かぶ。 「だったら尚更、検査してほしい。そして藍の前でヒートを起こさない様になる抑制剤を僕が作るから」 「そんな簡単じゃないでしょ? 抑制剤が高価なのは製法や効き方や副作用……色んな問題があるからなんだし」 「それでも、このまますれ違い続けるよりは試す価値あると僕は思うよ」

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