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第31話

 大学では相変わらず藍を避けていた。  検査を受けることは藍には言わないでくれと中根に頼んでおいたので、藍は一定の距離を保ったまま何かを言ってくる事はなかった。  もうずっと話していない。番にする気はあるのかと訊いたあの日から。  その答えを今は聞く気にはなれないし、そんな勇気もなかった。聞いたら全てが終わりそうで聞けなかった。  検査が終わった後ならちゃんと聞ける気がしていた。検査結果がどうであれ、番になれないと告げられる覚悟がその時には出来ているような気がしていた。  発情期が来て中根に連絡を取ると、永絆の家までやって来た中根は平気な顔で採血をした。前にヒートの時に会ったけれど、やはり中根にはΩのフェロモンが効かないようだ。 「ホントに……全然何も感じないんですか?」  マスクをしているせいで鈍いだけなんじゃないかと疑うと、中根はメガネもマスクも外して困った様に笑った。 「童顔だからマスクで隠してるだけで、無くてもフェロモンは効かないよ」  確かに中根の顔は幼く見えた。永絆より歳上の筈なのに、歳下に見えるくらい童顔だった。 「若く見られると舐められるからね」  そんな事を気にしているだなんて永絆には意外過ぎて、思わずクスリと笑ってしまった。  αはもっと傲慢で、プライドが高く、α以外の人間を同格に扱わない嫌な奴ばかりだと思っていた。だけど中根はそうじゃない。その事が永絆を安心させた。  その安心が気持ちを緩くさせる。発情期中でも中根の前では気丈に振る舞うつもりでいたのに、気を張っていた分強烈に身体が疼き出した。

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