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第32話
「永絆くん?」
息を乱して身悶え始めた永絆の傍に座り背中をさする中根に抱き着いて腕に力を込めた。
「どうしたの? 気分悪い?」
Ωのフェロモンを感じない中根には永絆の行動の意味を直ぐに察する事は出来なかった。
目眩がするような感覚の中、永絆は必死に中根にしがみつき自身の疼きを解放したくて堪らなかった。
「熱い……助けて……」
自らの服のボタンを外し始めた永絆を見て、漸く中根はそれに気が付いた。
慌てて脱ごうとする永絆の手を握り、肌蹴かけた服を元に戻すとベッドからシーツを取って永絆を包んだ。
「永絆くん、ダメだよ」
冷静に言うとシーツから抜け出そうと藻掻く永絆が涙目で中根を睨んだ。
「どうしてダメなのっ……こんなっ……辛いのにっ、抱いてほしいのにっ……お願いだから……抱いてよっ……」
疼く身体が勝手に声になって訴える。
誰でもいい。何でもいいからめちゃくちゃに抱いてほしい。
この身体の渇きを潤してほしい。
「それを言いたいのは僕じゃないでしょう?」
「……っ。わかっ……わかんないよっ……」
言いたい相手に伝えたって抱いてもらえやしない。それなら何も分かりたくない。
「僕や他の誰かじゃ君を満たせない。君は番に出逢ってしまったんだ。今、永絆くんを僕がその場しのぎで抱いたって余計辛くなるだけだよ」
「そんなこと……だって……そんなのっ、藍はオレを抱いたりしないのにっ……」
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