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第44話

 肩を抱く藍の腕にぎゅっと力が入った。  決して楽しい話じゃない。だけど藍には教えておかねばならない。  自分がどうやって生きてきたか。そしてそれでも覚悟は揺るがないか。 「その日から公園で寝泊まりした。学校には普通に通った。両親も周りにバレたくなくて中学卒業までの最低限の費用は出してくれてたからオレが宿無しだって気付く人はいなかった」  一つの公園に居続けると目立つからあちこちを転々とした。手洗い場の冷たい水でタオルを濡らして体を拭いた。髪もシャンプーなしで水を被って洗っていた。  週に一度はネットカフェのシャワーを利用して全身綺麗に洗った。貯めていた小遣いの殆どはそれに使って、出来るだけ学校の先生や生徒に不潔に思われない様に気を付けた。 「でもそんな生活、長くは続かなかった。補導されかけて逃げたり、タチの悪い不良に絡まれそうになったり、安心して眠れる事は一度もなくて冬が来たら寒さで死ぬだろうって予想してた。それでも学校には行った。給食目当てでね」  一日一食、安眠も出来ない生活は永絆の成長にも害を及ぼした。あっという間にやせ細り周りに心配されたけれど笑って誤魔化し続けた。 「全部オレが悪い。全部Ωだから悪いんだってずっと思ってた。両親がΩ嫌いでそれを聞いて育ったからそう刷り込まれてたんだ。でも両親は悪くない。βの両親なのにΩに産まれてしまって申し訳ないと思ってた」  両親は永絆がΩだった事で浮気したのではと疑い喧嘩もしていた。かなり低い確率でβの両親からΩやαが産まれる可能性はある。それでもそんな低い確率を簡単に信じられる訳がない。  両親がその事でその後どうなったか、永絆は知らない。家を出されたその日から今まで一度も会っていないのだから。

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