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第45話
「公園での生活に限界を迎えて動くのも億劫になった頃、声を掛けられた。父親より少し年上くらいのおじさんだった。お金をあげるから一晩相手して欲しいって言われたんだ」
その男は公園で寝泊まりする永絆をよく見掛けていたと言った。詳しい事情は知らないがお金があれば何かと助かるだろうと優しく手を差し出した。
「永絆、もういい」
話の続きをしようとした永絆の口を藍の手が塞いで遮った。
「永絆が生きてくために頑張った事を否定するつもりも非難するつもりもない。そんな事で嫌いにもならない」
塞いだ手を離すと永絆の頭をポンポンと優しく叩き、そっと抱き寄せる。
藍の肩に頭を乗せて永絆は目を閉じた。
「藍はそう言ってくれるって気はしてた。だけどね、言葉ではいくらでも言える。オレが実際どんな事をしてきたか知ったら、藍はきっと軽蔑する」
「しない。絶対しない」
藍の腕から逃れて、永絆は藍を見据えた。
言わなければ一生バレない事かもしれない。けれど調べられたら直ぐにバレてしまう。他人の口から聞かされるより自分から話す方が罪悪感も薄まる。
「その人に飼われてるんだ、今もずっと」
「……飼われてる?」
藍の瞳が一瞬揺らいだのを見逃さなかった。
「大学卒業までの約束で愛人契約をしてる。一晩限りのつもりだったけど気に入ってくれて、住む家も与えてくれた。着るものも食べるものも、大学卒業までのお金も全部出してもらった。代わりにオレは彼の所有物になったんだ」
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