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第46話

 生きる為に決断した。  あのまま公園で寝泊まりを続けていれば行き着く先は身体を売って稼ぐ道だった。その時はまだ発情期を迎えていなかったけれど、やがて来る発情期を公園で過ごせば不特定多数に犯される可能性は高い。  どうせ身体を売らなければいけないのなら自分を気に入ってくれているこの人の元に居た方が安全だと考えて、彼の申し出を受けた。  大学卒業までの期間、かかる費用は全て出してもらう代わりに自らの自由は彼のもの。  卒業した後は自力で生活する事を約束させられた。  だからどうしても大学を出てちゃんとした職に就かなければいけなかった。そうしないとまた公園へ逆戻りになる。今、住んでいる部屋も出ていく決まりになっている。 「今も……?」 「今もだよ。彼との決まり事で番を作らない事になってる」  藍と出逢って、こんな事が起こるなんてと悔やんだ。まだ藍が紫之宮家の人間だと知らなかったあの初めて出逢った日。  自分の人生はもう捨ててしまっていたから、約束事が無くても番を作るつもりはなかった。それなのにあの日、藍に出逢って気持ちが揺れた。この人の番になりたいと思ってしまった。  そして天秤にかけた。  これから先の自分の人生を、運命の番に託すか、飼ってくれている彼に託すか。  それは賭けだった。もう一度逢えたら、その時は番に自分の未来を託そうと。次にいつ逢えるかはわからない。大学を卒業した後、何年も経ってからかもしれない。

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