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第48話

「それでも構わないって言ってもか!?」  準備室を出ようとドアノブに手を掛けた瞬間、その手を掴まれ後ろから抱き締められた。背中越しに伝わる温もりに戸惑う気持ちを押し殺す。 「誰も幸せになれないよ、藍」 「このまま項を噛んでも構わない」  永絆の項に藍の口唇が触れた。ゾクリと肌が粟立つ。嫌悪ではなく、それは期待だった。 「発情期じゃないのに噛んだって意味無いの、知ってるでしょ」  番になるには発情期に繋がりあった状態で噛む事。今は発情期ではないから噛まれてもただの傷痕になって数日で治る。 「そいつがいいのか? そいつと番うつもりなのか?」  項に吸い付きながら藍が苦しそうに囁く。 「……言ったでしょ。誰とも番うつもりはないって」  言うと、項に痛みが走った。噛まれたんだと直ぐに分かって、泣きそうになった。  意味のない噛み跡などつけて欲しくなかった。見る度に、痛む度に思い出して辛くなるから。 「永絆……」  振り向いて、藍を抱き締め返せたなら良かった。  もう置き去りにしないで、いつでも傍で触れていてと言えたなら。 「ごめん」  ドアノブを回して無理やり藍の腕から逃れると準備室を出て扉を閉めた。  藍が追いかけて来ないことを願いながら廊下を走って外に出ると、そのまま大学を後にして自分の部屋に帰った。

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