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直接対決!

***  ――周防小児科医院。  先輩が学校が終わると自宅に帰らず、ここに通うところを、何度もあとをつけた。軽井沢の病院で手術をして、通院するのには遠いからと、ここに通っているのかもしれないな。  しかし、小児科に通院する高校生って、どうなんだろ? 「喜多川はどう思う?」  病院前の塀に背中を預けて、背の高い喜多川を、仰ぎ見ながら訊ねてみる。 「王領寺の様子を見てると、学校にいるときよりも、弾んだ足取りなんだよ。だからここに、何かあるんじゃないかって、思わずにはいられない」  さっすが喜多川! よく見てるじゃないか!!  嬉しくなって口を開こうとしたとき、病院から親子連れが出てきた。僕は迷わず話しかける。 「あの、すみません。病院の中に僕と同じ制服を着た、生徒が来ていますよね?」 「ああ、太郎くんのことね。最近、見かけるようになったんだけど」  唐突に話しかけたからか、ちょっと驚いた表情を浮かべ、首を傾げながら答えてくれた。  ――しかも名前が太郎って、どうして? 「えっと、ちょっとお聞きしたいんですが。知り合いのコがアレルギーで、いい病院を探していて。ここの病院の評判を、是非とも教えていただけないでしょうか?」  固まってしまった僕の背後から、ナイスな質問をしてくれる喜多川。 「周防先生は、とても優しいお医者さんですよ。看護師さんたちも明るくて、いい人たちばかり」 「あのね、えっとね、注射も痛くないんだよ。すおぅ先生は、どんだけーって面白い人なの」 「そうですか、有り難うございます。安心して通院できそうです。お時間とらせてしまい、すみませんでした」  ペコリと親子連れに頭を下げて、僕に向き直る。 「王領寺の奴、殺伐とした受験勉強が嫌になり癒しを求めて、ここに通うようになったのか?」 「絶対、そんなんじゃないって。僕は決めたよ、喜多川。風邪を引いてみようと思う!」 「は!?」 「先輩の好きな人が誰か――見極めるまで諦めきれないから」  呆れ返りながら心配する喜多川を尻目に、しっかりと鼻風邪を引いて、周防小児科医院に見事、潜入することに成功したのだった。

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