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直接対決後のふたり♥️

*** 「あのさ、タケシ先生。これは一体、何だったんだよ?」  突然訪れた珍客に、太郎は不思議顔するしかないだろうな。  患者さん経由で、元彼のことを聞いてから、その内やって来るだろうと予測した俺は、太郎に三着の着ぐるみを買ってやった。 『宿題が終わったらそれを着て、待合室で子どもたちと遊んでやって』    なぁんていう、名目をつけたのだけど。普段見る、歩の姿との違いに驚いてくれて、作戦成功ってトコだろうな。  ――あまりの可愛らしさに、逆に萌えられても困るんだけど――  ちょっと照れてからもう一度、歩の頭をガシガシっと撫でた。 「タケシ先生、もしかして……」 「お前は、気にすることないから。俺が勝手にやったことだ」  実際俺は、まったく何もしていない。コイツが着ぐるみを着て、ぼんやりしてくれたお陰で、何とかなったんだから。 「俺のこと、惚れ直したとか?」  ――やっぱコイツ、バカ犬だ。 「プリン食べ終わったら、ちゃんと宿題してから、下に来いよ。子どもたちが待ってるからね」  呆れながら言った矢先、着ぐるみの大きな手が、俺の顔を強引に掴む。頬にふわりとした布地を感じたとき、唇に甘い衝撃――プリンの味が、口の中に広がっていく。 「お仕事頑張ってね、タケシ先生」  プリンよりも甘い顔した歩に告げられ、思わず頬に熱を持ってしまった。着ぐるみに襲われた挙句に、悶々とするなんて、本当バカみたいだ――  両手でパシパシと頬を叩きながら、急いで診察室に戻る。  ――早く顔の熱を追い出さなきゃ。

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