12 / 36
Always With You:恋って何だろう?②
***
年下の俺の幼馴染は、少しだけ特殊な人間だ――
はじめて逢ったのは、俺が小学校低学年のとき。父親が西園寺家で執事として働き始めたのが、出逢ったきっかけだった。
西園寺くんはその頃、まだ幼稚園に通っている年頃で、初対面したときは、母親の後ろに隠れて、なかなか姿を見せてもらえなかったのが、印象に残ってる。
だが、それが一変したのが西園寺くんが、附属小学校に入学して、しばらくしてから。
公立の小学校から帰った俺に、父親が血相を変えて駆け寄ってきて、
「圭ぼっちゃまが、まだ学校から帰ってないのだが、見かけなかったか?」
それはもう、血の気が引いた顔色で訊ねられたんだ。俺がいなくなったら、こんな風に捜してくれるんだろうかと、一瞬考えてしまうくらい。
大人たちに混じって、俺も捜すことにしたけれど、行き先がさっぱり分らなかった。一緒に遊ぶ機会なんて、数えるくらいだったし――
「確か、かくれんぼした時に言ってたよな。暗くて狭いところがスキって」
堂々と附属小学校の門をくぐり、暗くて狭そうなところを、片っ端から捜し歩いた。そして見つけたんだ、ウサギ小屋の中で、膝を抱えて俯いてる西園寺くんを。
俺は黙ってウサギ小屋に入り、隣に腰掛けて思い切って話しかけてみた。
「西園寺くん、こんなところで何をしてるの? みんなが心配してるよ」
「……今日、クラスにいるヤツに言われたんだ。お前、高台にあるオバケ屋敷に住んでるんだって? ってさ。だから言ってやったんだ。それがどうした、オバケと友達だぞって」
「そんな……オバケなんていないのに」
「そしたらさ、みんなビビって逃げてやんの。怖がりだよなー、本当に」
西園寺くん、もしかして――
「友達作ろうとして、話に失敗しちゃった、とか?」
「はっ、何を言ってるんだ喜多川。僕は失敗なんてしないし。怖がりの友達なんて、必要ないもん」
言い放った言葉とは正反対の、寂しげな瞳がすべてを物語っていた。
「俺は西園寺くんの友達だから、安心してよ」
「何を安心すればいいんだよ、意味分からないし」
「あはは、そうだね。でもずっと傍にいてあげるから。友達だから、俺のいうことを少しだけ聞いてもらえるかな?」
そこから西園寺くんに、条件付の交渉が始まったんだ。彼の変わった性格を直しつつ、サポートしてあげて。
ともだちにシェアしよう!