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Always With You:恋って何だろう?④
***
「喜多川……」
体育の授業でグラウンドをランニングしている喜多川を、僕は一発で見つけてしまった。最初は集団の真ん中あたりで、流すように走っていて。
時折、校舎をちらちら見ながら、走る姿に首を傾げていたら、ラストの1周で、集団を置いていくように走り出し、大きなスライドを使って、トップに躍り出た。
喜多川は、頭も運動神経も抜群にいい――
短く切った髪をなびかせ、走り抜ける姿は、とてもカッコイイとしか言えない////
一緒に習っていた武道も、そつなくこなしていたし、僕は一度もアイツに勝てたことはなかった。
「つぅか、何かに熱くなってるトコ、見たことがないんだよな。あ、余裕で一番にゴールしてるし。当然か……」
そんな出来すぎの喜多川に、告白したらどうなるんだろ。
「はあぁぁ――いろいろ考えても、予想ついてしまう。何を考えているんだ西園寺くんって、注意されそうだ」
僕が先輩がスキだって言ったときも、すごい顔して、おののいていた。珍獣を見るような目で、見ていたくらいだ。
数学の授業もそっちのけで、あれこれとシュミレーションしている内に終了。
「なぁ姫、ランチは学食?」
仲のいいクラスメート、数人がやって来た。
「ううん、今日は弁当なんだ。喜多川と一緒に食べてくる」
「前から聞きたかったんだけど、その喜多川先輩と姫って、ただの幼馴染なワケ?」
その質問を聞きつけ、更に人だかりが出来てくる。
「姫ってば暇があったらすぐに、3年のフロアに行ってるし、何かあったら、名前連呼してるよな」
――確かに。困ったときは、一番に喜多川を呼んでいた。
「だーって、喜多川は僕の下僕だから。言うことを何でも聞いてくれるし、やってくれる使用人の一人なんだからさ、当然だと思うんだ」
「そうやって、先輩を下僕扱いしちゃうとか、姫らしいといえばらしい!」
「そういうお前も、西園寺姫に下僕扱いされたいんだろ。踏んづけてもらえって」
「やめっ//// それすっげぇ萌える!」
「……あとで踏んづけてやるよ。じゃあね」
騒ぎまくるクラスメートに手を振り弁当を持って、さっさと教室を出た。
「相変わらず、思ってもいないことを口にするなんて、バカみたいだ」
大好きな喜多川を下僕扱いとか、信じられない……
肩をガックリと落とし、ゆっくりと歩いて、3年の教室があるフロアに到着。喜多川のクラスを覗いてみたら、あちこちで弁当を広げている姿が目に入った。
「失礼します。すみませんっ、喜多川いませんか?」
いつものように戸口に顔だけ突っ込んで、教室内に向かって声をかける。
「お~、1年の姫! ご機嫌麗しゅう!!」
「委員長なら、さっき先生に呼ばれて、職員室に行ったぞ」
「喜多川やめて、俺らとメシ食おうぜ?」
などなど次々声をかけられるが、求めていた喜多川本人がいなくて、ガッカリを隠せなかった。
ため息をついて、戸口から顔を引っ込めようとした矢先。
「待てよ、西園寺。俺とメシ食おう」
聞き覚えのある声が、僕を呼び止めた。
「……先輩?」
この間まで大好きだった先輩が、ゆっくりとした足取りで、こっちに向かってくる。
「ゲッ、たらしの王領寺が1年の姫に、手を出そうとしてる!!」
「おいおい、喜多川が大事に愛でている西園寺に、ちょっかい出したら、ぜってー殺されるぞお前」
「完全無欠のメガネ委員長VS我校随一のたらしまくりのオオカミ男、果たして勝利の女神は、どちらに微笑むのか!?」
僕以上の声援を受け、クラスの人たちに両手を振りながら、教室から出て来てくれた。
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