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Always With You:伝えたいキモチともどかしい想い③

*** 「西園寺くん……」  家から出てきたときの彼の様子が、どことなく違うことに、すぐに気がついた。  いつもサラサラふんわりしている髪型が、今日は何故かぱりっとしていて。毎日制服のネクタイを緩めがちに締めているのに、きっちり結ばれている姿は、らしくなかったし。  それだけじゃなく挨拶してきた西園寺くんから、甘い香りが漂ってくる状態に、酷く落ち着かなかった。  ――今日に限って、どうしたんだろうか?  ちらちら隣にいる彼に視線を送ると、バレンタインのことを口にした。 (ああ、そうか。きっと友達の間で、チョコレートの数でも、競っているのかも)  否応なしに目立つ西園寺くんなら、今日の決まった格好が、女のコの目を惹くだろう。  草原に咲く、一輪のキレイな花っていう感じかも(笑)  そんなことを考え、ニコニコしながら言ってやる。 『そんなことしなくたって、今年もきっとたくさんのチョコが貰えるよ。だって西園寺くん、いつもカッコイイし』  これで今日も、彼のご機嫌はバッチリだろう。  そう思ったのも束の間、西園寺くんの顔色が、どんどん暗くなっていった。  今の言葉にどこか、地雷でもあったのか!?  内心、頭を抱えたら―― 「……なぁ、お前は僕が女のコからチョコを貰っても、平気なのか? 僕が誰かにチョコをあげたりしたら、気になったりする?」  それはそれは、恨めしそうな目をして、俺を睨みあげてきた。 『もしかして王領寺に、チョコレートをあげるのかい?』  この間、お昼を一緒にしてから、西園寺くんは浮かない顔ばかりしている。しかも、俺を避ける始末なのだ。  涙をたくさん流すほど、大好きだった人だからこそ、そんなに簡単には諦められないだろうって、どこかで思っていた。 「そんなのあるワケないだろ! だって、喜多川と約束したじゃないか。先輩のこと諦めるって。僕が守れないと思ったのか、お前っ?」  なんか……俺ってば、どんどん墓穴を掘ってたりする?  いつも一緒にいたからこそ、西園寺くんの考えてることは読めると思っていたのに、今は全然分からない。 「喜多川のバカ! もうお前なんて大っ嫌いだっ!!」  泣きながら告げられた言葉は、ぐさっと胸に深く突き刺さった。  はじめて言われた大嫌いの言葉で 自分がこんなにもショックを受けるとは、思いもしなかった。 「西園寺くん……」  追いかけたいのに、足が動かないんだ。ショックが大きすぎて、身体が震えてくるとか。 「泣いていた。泣かせてしまったのは俺……なんだよな」  さっぱり分からない。君のキモチと涙のワケ。  追いかけて、その涙を拭ってやりたいのに今、自分がそれをしてしまうと、余計に傷つけそうで、とても怖いんだ―― 「……どうすればいいんだろ」  ただ、そこに立ち尽くし、途方にくれるしかなかった。

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