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Always With You:真実の恋
先に呼び出しておいてあとから来るなんて、カッコ悪いことは絶対に出来ないから、指定の場所に急いだ。
付属小学校の門扉は勿論、しっかりと閉じられていて、目に映る校舎から、得もいわれない雰囲気が、ひしひしと漂っている。
「……オバケなんて、出てくるワケないよな。アハハ……」
校舎を見ないようにしようと塀に体を預け、夜空を見上げることにした。
「ここから始まったんだよな、喜多川との友達関係」
知り合いのまったくいない、ここに入学して友達をたくさん作ろうと、息巻いていたのに、思ってもいないことを言ってしまい、見事失敗しちゃったっけ――
「落ち込んでる僕に、友達だよって言ってくれた喜多川の言葉が、すっごく嬉しかったんだ。それまではただの、使用人の子どもだって見ていたから」
それからというもの、何かあるとすぐに喜多川に頼ったり、一緒に遊んでやった。
――いつも傍にいる仲のいい、ただの幼馴染だったのにな。
知り合いから友達に昇格したときは、ひとえに嬉しかった。だけど友達がいきなり、恋愛対象になるなんて、嬉しさよりも戸惑いのほうが大きい。
(告白してしまったら、きっと友達ではいられなくなる……)
いつもとは違う目線で見つめていたら、きっと喜多川は恐れおののいて、逃げ出してしまうかもしれない。だけど、諦めたくないんだ。
「僕は喜多川のことが、大好きだから――」
「……西園寺くん?」
呟いた瞬間、突然現れたその人にギョッとして、慌てて塀から体を起こした。訝しむ喜多川の顔にビビッて、ずるずると後ずさりしてしまう僕。その姿は、滑稽そのものだろう。
「ききっ、きゃー、出た……なんちゃって。あはは」
「俺がオバケに見えるなんて、随分と失礼な話だね」
――さっきの言葉、聞かれただろうか。
慌てて、違う話に変えてみたのだが、反応がイマイチな感じ。
「冗談はこれくらいにして西園寺くん、こんなところに呼び出しておいて、話って何?」
喜多川から話を切り出され、狼狽するしかない。まだ、心の準備が出来ていなかったから。
「あー……えっと、その。この間さ、喜多川のこと大嫌いなんて言って、悪かったと思って」
とりあえず、場の雰囲気を和やかにしてみよう。
「やっ、あれは俺も悪かったと思ったから。西園寺くんのこと、ちゃんと信じていないみたいな発言しちゃったしね。ゴメンよ、キズつけてしまって」
形のいい太い眉毛がへの字になって心底、反省している様を表していた。
「喜多川――」
言うなら今しかない……そう思うのに、言葉が空を切ってしまう。それを口に出したら、この関係が終わってしまうような気がしたから。
(でも僕は、このままじゃイヤなんだ!)
喜多川ともっと、仲良くなりたい。もっと傍にいたい、抱きしめあいたい!
ポケットに仕舞いこんでいたチョコを、勢いよくパッと取り出して、喜多川の手に握らせてやる。
「これは?」
「……僕からの、バレンタインのチョコ、だけど」
手渡されたチョコの中身を、じっと見つめる喜多川。
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