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Always With You:真実の恋③

*** 「どうしよう……」  西園寺くんの無茶振りは、いつものことなれど、今回ばかりは自分が思いっきり関わっているため、頭を抱えるしかない。 『いいか、喜多川! 僕を求めてみてよ』 「はい?」 『明日の放課後、学校でデートしよう。そのとき、喜多川からキスしてよ。勿論、ベロちゅーだぞ!』  いつもの俺なら、無理だと断っていただろう。でも―― 「あんな風に、期待のこもった目で見つめられて懇願されたら、断れないじゃないか……」  厄介なのは、それだけじゃなく。  見つめてくる眼差しから、スキだというキモチが、これでもかと駄々漏れしてきて、頭の中が一気にパニくってしまったんだ。  ――西園寺くんが、俺のことをスキ。  王領寺に対して、まだ未練があると思っていただけに何だか、棚ボタ状態のようで。 「こんな俺がスキって、今でも信じられない」  西園寺くんからキスされただけで、飛び上がってしまう、情けない俺なのに――  気がついたら教室にいた、王領寺の前に佇んでいた。 「よぅ、喜多川……何か、すっげぇ暗い顔してるけど、大丈夫か?」  イチゴミルクの箱にさしたストローを口にくわえて、ぼんやりしたまま俺の顔を仰ぎ見る。 「あのさ、王領寺。教えてほしいことがあるんだ」 「マジかよ。完全無欠の学級委員長様に、俺が教えることって、あるんだろうかね」  王領寺の周りを取り囲んでいたクラスメートも、似たようなことを口にした。 「……ディープキスの仕方、教えてくれないか?」 「喜多川・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)・・・・・」  王領寺は口からイチゴミルクをぼたぼた溢して、そっと俺の苗字を呟く。 「おいおい……委員長の口から、とんでもない発言がなされたぞ!」 「ちょっと待て! それって、相手がいるからこその質問だろ。もしかして――」 「考えたくないぞ。だってどう考えたって委員長の相手は、ひとりしかいないじゃないか!」 「っていうか、それどうやって教えんの? もしかして王領寺が委員長と?」  俺の思惑とは別に、どんどん話が広がっていく様子を、若干ドン引きながら王領寺を見ると、汚した部分を拭いて袖をコッソリと引っ張ってきた。  顎で、教室の外を指し示してくれる。  大騒ぎするクラスメートの目をかいくぐり、王領寺と一緒に教室の外に出た。 「っ……何とか、脱出できたな」 「済まない、王領寺。こんなことになるなんて、考えてもいなかった……」 「らしくねぇな喜多川。もしかして恋の病か!?」  ばこんと力いっぱい、後頭部を叩いてくる。 「や……恋とかまだ、よく分からなくて」 「はぁ!? だってそれがあるから、あの発言なんじゃねぇの?」  王領寺が歩き出したので、それに倣って、ついて行くことにした。 「あ、うん。でも実際に俺……よく分からなくて」  西園寺くんを、どうしても泣かせたくなくて――自分のせいで泣くところを、どうしても見たくなかった。だから…… 「西園寺のこと、何とも想ってないのか?」  そのままついて行くと、傍にある中庭のベンチに辿り着く。残念ながら、寒風が吹き荒んでいたけど肩を寄せ、ふたりして並んで座った。 「何とも想ってなかったら、こんなに悩む必要はないって。大事に想っているから、その……」  視線を伏せながら告げていると、いきなり頭をガシガシッと撫でられる。叩いたり殴ったり、忙しないヤツだな。 「喜多川は俺と違って頭がいい分、変に考え込んで、悩んじまうんだよな。簡単に考えてみろよ。まずは――」 「うん……?」 「西園寺のことが、スキかキライか」 「それは、スキだと言える。キライだったら、一緒にいないから」  顔を上げて、はっきりと断言したら、分かったように、こくこくと頷いた。 「だったらお前、友達のこともスキだよな」 「そうだね」 「その友達と、キス出来たりする?」 「無理だと思う!(-ω-)/」  きっぱり言ってやったら、ゲラゲラと笑い出す。 「だったら何で、西園寺とディープキス出来るんだよ?」 「そっ、それは断ったら、可哀想だと思って」 「だったらお前、友達に迫られたら可哀想に思って、キスしてやるのか?」 「……無理」 「それって喜多川にとって、西園寺が特別な存在だからだろ?」  ――西園寺くんが特別な存在…… 「まぁ、自分のキモチが分かって戸惑うのも、分からなくはないけどさ。でもここまで、線引きがハッキリしてるのに、曖昧な態度をとるのは西園寺からしたら、辛い思いをさせることになるんじゃないのか?」 「俺は……西園寺くんが――」  目をつぶるとまぶたの裏に、たくさんの西園寺くんの顔が、次々と浮かんできた。  笑った顔や困った顔……怒った顔に、泣いてる顔――どんな顔をしていても俺の中でそれは、キラキラと輝いていて。 「友達としてじゃなく、幼馴染だからじゃなく……西園寺くんのことが、スキなんだ」  両手に拳を作り、横にいる王領寺に向かって言うと、今更何言ってんだと、呆れ顔をされてしまった。 「ま、喜多川の場合、西園寺のことを大事に想いすぎていたから、見えなかったんだろうけど。で、どうするんだよ。ディープキスの件」 「そうなんだよ、どうしよう。出来ないと、嫌われちゃうかもしれない」 「大丈夫だろ。お前が出来なかったら西園寺から、押し倒しそうな感じするけどな」  その発言で、思い出してしまった。王領寺は西園寺くんと、その経験があるから言えちゃうワケで。  ――俺が経験したことがない、すごいのをしたんだろうか? 「喜多川……お前の目が怖いんだけど。睨んでくるなよ、それじゃあ教えられないって」 「ゴメン。勝手に、感情的になっちゃった。それで、どうやって教えてくれるんだ?」  その後、王領寺から口頭と手を使って、詳しくアレコレ教えてもらい、頭にしっかりと叩き込んだ。  西園寺くんに、もっとスキになってもらえるように頑張ってやる!

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