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Always With You:真実の恋⑤
***
次の日、学校中が騒然となっていた。理由は俺が西園寺くんにつけた、首のキスマークのせい。
「王領寺のせいで、姫のはじめてが委員長に、奪われてしまったじゃないか!」
「卒業するまでは、キレイなままでいると思ったのに」
「王領寺がアレコレ、喜多川に教えたのが悪い」
などなど、俺以上に王領寺が叩かれ、袋叩きにあっている姿に、割って入る勇気もなくて(入ったら最後、間違いなく俺も同じ運命を辿るだろう)
昼休みになってやっと、落ち着きを取り戻したクラスから王領寺を連れ出し、この間の場所で話すことにした。
外にあるベンチは、この間よりも日が差していて暖かかったので寒さに、体を震わせる必要がなさそうだ。
「いろいろ悪かったね、王領寺。西園寺くんのことで、巻き込んでしまって」
「ああ……でも上手くいって良かったな」
「そのことなんだけど、実は――」
うんざり顔した王領寺に、昨日のいきさつを、思い切って話した。話している最中、どんどん顔色が変わっていくのが面白かった。
王領寺ってば顔色ひとつで、人に笑いを与えられる人間だったんだな。だから人気があるのかも――
「喜多川・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)・・・・・お前バカ?」
「はい?」
「それとも、天然なのかよ? 普通そこまでいったら、ヤることヤるだろうよ!」
「そうなんだけどさ。王領寺の言った通りにお姫様抱っこして、いい雰囲気にして、西園寺くんにキスしたまでは良かったんだ。だけどその後が、まったく分からなくて」
苦笑いしながら肩をすくめたら、後頭部を思いっきり叩かれた。
(☆_@;)☆ \(`-´メ)
「分からないじゃねぇよ! 俺が今日一日で、どれだけのクラスメートに、しばかれたと思ってるんだ」
「ゴメンね、こんなことになるとは、想像つかなくって」
「俺の方がビックリだよ、何もしていないなんて。西園寺も呆れただろ?」
やれやれと言いながら、じと目で俺を見つめる。
「うん。あんなキスをしておいて、その先が出来ないなんて信じられないって言われた」
「しょうがねぇな。だったら俺が――」
「それがダメなんだ。王領寺の手を借りずに、自分で何とかしろって言われてるから」
「それって、お前……俺が手を貸したこと、バラしたのかよ!?」
頭を抱えて、うわぁと何度も呟く王領寺。
「大丈夫だよ。全面的に協力してくれた件は、何とかバレていないから」
「・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)・・・・・」
「さすがは学校で、タラシと言われるだけのことはあるよね。あの時間の音楽室が、あんなにロケーションとして最高だったり、西園寺くんとの身長差を考えての、お姫様抱っこ作戦が上手くいったりしたのも、王領寺のお陰だよ」
「ナニをバラしたんだ、お前?」
苦笑いしている俺に、頭を抱えたまま質問した。
「えっと、ディープキスのこと。あまりにも上手に出来すぎたせいで、西園寺くんに聞かれて、王領寺に教えてもらったって話したら、ふたりでディープキスしたのかって、詰め寄られてしまってさ。勿論、否定したから安心して」
「……喜多川お前、自力でこの先を何とか出来るのか? エロ動画とか、見たことくらいあるだろ?」
「う、うん//// だけど見てる自分が恥ずかしくなったり、背徳感があって、早送りでしか見たことがなくって」
「ちゃんと見ろ! そしてそれを、自分たちに重ねればいいんだ。そうすれば見れるから!」
言いながら、ばしばしと俺の肩を叩いて、鼻の穴を大きくする王領寺の顔に、吹き出してしまいそうになった。
「分かったよ。ご教授感謝する」
「このこと、西園寺に言うなよ! 絶対に!」
「言わない言わない。大丈夫だから」
アハハと笑いながら告げると、何だかなーと、疑惑の眼差しを向けられる。前科があるから、当然か――
「とにかく、大事にしてやれよ」
王領寺が呟くように、そっと言った言葉が、胸に深く突き刺さった。当たり前のことだけど、そうだよな。
静かに頷くと、大丈夫かよと言って、ぺしぺしと頭を叩いてくる。
たったそれだけのことだったけど、たくさん勇気をもらえた気がした。
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