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Always With You:真実の恋⑧

***  新学期が始まり、僕は2年生に進級した。  しかも相変わらず姫と呼ばれる風習はそのままに、周りがちやほやしてくれるのは結構鬱陶しいけど、それがバリアになってるお陰で、襲われずに済んでいる状態。  何かあって助けてくれていた喜多川は、学校にはいない――  しかも大学とここの生活スタイルが合わないため、喜多川に逢うのが難しくなっていて、不満や不安が募るばかり。 「逢いたいときに逢えていた去年までの環境が、快適すぎたせいで、友達と喋っていてもつまんないとか、どんだけ喜多川ラブになっちゃったんだろ、僕……」  通常通り学校で授業を受け、その後部活にきちんと行って、入りたての新入部員をここぞとばかりに弄り倒し、ストレスを発散をさせてもらってから、コンテストに出す絵の下絵を終わらせた。  周りからの誘いを断りひとりで帰るべく、とぼとぼ校門に向かって歩いていたら―― 「ちょうど良かった、圭!」  校門前にある桜並木の下で、喜多川が手を振っていた。だけどその姿は、いつもとは違っていて。 「喜多川っ、どうしたんだよ、メガネは?」 「あー……メガネやめて、コンタクトにしてみたんだ。変じゃないかな?」 「全然、変じゃないって。むしろ、ヤバい感じがする」  黒縁メガネがあったときは、お堅い印象が雰囲気に出ていたけど、それを外した今、ふわっとした包み込んでくれるような眼差しが、すぐ傍にあって、んもぅ否応なしにドキドキさせられるとか//// 「ヤバいって、どうして?」  赤面して困ってる僕を、わざわざ顔を寄せてきて訊ねるとか、確信犯なのかお前は!? (いいえ、天然です!) 「気をつけろよ、喜多川。大学で女子にナンパされるかも」  顎を引き上目遣いしながら注意してやったら、途端に瞳を細めて、嬉しそうな顔をしやがった。 「ナンパされないって、安心して。そういう圭こそ、大丈夫? 襲われたりしてない?」  ひとつになってから喜多川は僕のことを、下の名前でしか呼ばなくなった。それに合わせて僕も名前で呼んであげたら、喜ぶんだろうなって思ったんだけど、変にテレてしまい上手くいかなくて―― 「僕が簡単にやられないこと、お前がよく知ってるだろ。それよりも聞いてよ、1年に喜多川みたいなヤツが入学してきてさ――」  終わりかけの桜の花びらが、ふわりふわりと舞い散る中、ふたり並んで帰れることに幸せを感じてしまった。相変わらず上手く名前が呼べないけど、それでもいつか自然に、呼べる日が来ると思うんだ。 「圭、愛想よく振舞っていたら、そのコに好かれてしまうかもね」  学校のことを楽しく喋っていたら、突然渋い顔して吐き捨てるように、低い声色で告げる。 「大丈夫だって。僕は――」 「ん?」 「僕は、春臣が一番好きなんだから。春臣じゃなきゃ、ダメなんだからな!」  喜多川の右腕を引っ張り、耳元で言ってやった告白に、顔だけじゃなく耳まで真っ赤になり、渋い顔色が瞬く間になくなって、情けないくらいに、だらしない表情を浮かべた。 「うわ……喜多川その顔、違う意味でヤバいぞ。何とかしろって」 「む、無理だよぅ。圭が嬉しいこと、言ったせいなんだから」  デレデレしながら隣を歩く喜多川に、吹き出してしまうしかない。以前にはなかった、こういう刺激を味わうのも、楽しいのかもしれないな。 「じゃあ喜多川。これから僕の家に来る? その……勉強教えてもらうついでに、喜多川がどれくらい、僕のことを想ってるのか教えてもらおう、かな……っていうか」  チラチラ横目で確認しながら告げた言葉に、ちょっとだけ目を見開き、艶っぽく微笑む。 「ちゃんと勉強しなきゃ、教えてあげないよ」 「分ってるって、もう! 変なトコにマジメなんだから」  イジワルな喜多川に怒ってみせたら、唐突に目の前が塞がれる。塞いできたのは、喜多川の顔と唇―― 「ぅ、ちょっ、いきなり////」 「機嫌、直してよ圭」 「そんなに、怒ってないって」  久しぶりのキスだったからこそ、ドキドキがとまらない。  真っ赤になる僕を他所に、頭を優しく撫でてから左手をぎゅっと握って、引っ張るように歩いてくれた。 「少しでも一緒にいたいから、急いでいい?」  一緒にいる時間が限られているから、逢瀬の時間が短く感じてしまう。少しでも濃厚な時間を、一緒に過ごせるのなら。 「うん、急ごうか喜多川」  夕焼けが僕たちの並んだ影を細長く、アスファルトに映し出してくれていた。  これから過ごす時間を、映し出すように―― 【おわり】 ※はじめましての読者様、ならびにご贔屓にして下さる読者様、改めまして、閲覧(人'▽`)ありがとう☆ございます。  たくさんのリアクションのお陰で、最後まで執筆が出来ました。感謝感謝です。  ちょっと変わったイケメン喜多川と、ツンデレ全開の西園寺くんのお話、いかがでしたでしょうか?  ちょっと寂しい感じの終わり方でしたが、番外編をこの後、別目線で書きますので、最後までお付き合いくださいね。

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