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男子高校生 西園寺圭の真実の恋番外編 ~雨~⑤
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「頑張ってるじゃないか、学年代表!」
西園寺先輩に逢える機会は、休み時間に無理矢理にでも逢いに行くか、お昼休みに逢いに行くか、放課後部活で逢うという手段しかなかった。
休み時間、わざわざ用事を作って逢いに行くにしても、上級生のいるフロアに、のこのこ顔を出す勇気がなかったので、お昼休みに学生食堂に顔を出しては見たけど、逢ったことすらない状態。
きっと弁当を、教室で食べているのかもしれないな――
ごくたまぁに、廊下ですれ違うことがあるけれど、周りにはかならず取り巻きがいて、西園寺先輩を守るように、視線を光らせているため、声もかけられなかった。なので安心して接触出来るのは、部活のみ!
「いい加減、ちゃんとした苗字で呼んで下さいよ。御堂っていう、立派なのがあるのに」
渋い顔をしつつメガネを上げながら言っても、どこ吹く風。さらさらな髪の毛をかき上げ、何言ってんだよと呟く。
「分かってないね、ホント。個人的に、可愛がってあげてんのにさ。他のヤツラは苗字で呼んでるけど、お前だけ、特別な感じで呼んでやってるじゃないか」
「それが、イヤだと言ってます!」
とか何とか言ったけど、実は内心喜んでいたりする。でも西園寺先輩の口から、御堂って呼ばれたい願望もあるんだよなぁ。
俺の顔を見て、ニコッと微笑んでそれから、「御堂、好きだよ」なぁんて言われた日にゃ、どうなってしまうか――
「何だよ、僕の与えるプレッシャーに負けそうなのか?」
「ぷれっしゃー?」
言ってる意味が全く分からず、棒読みでオウム返しをしたら、カラカラと可笑しそうに笑い、お腹を抱えた。
「ああ。学年代表って言われ続けたら、自ずと成績もトップを維持しなけりゃならないって思うだろ。故に頑張ってもらうべく、呼んでやってるワケなんだ。優しい先輩に支えられて、幸せだよなぁ学年代表!」
言いながら後ろから、ぎゅっと抱きついてきた。途端に鼻腔をくすぐる西園寺先輩の香りが、胸を高鳴らせる。
隣にいるクラスメートが、羨ましそうに俺を見ている視線が、ぐさぐさっと刺さるけど、華麗に無視してやった。
「しっかし成績は良くっても、今描いてるデッサン、マジでダメダメじゃん。目の前にあるものを、見たまま描けばいい簡単なことを、ワザと難しくしているようにしか見えないな」
そのままの体制を維持して、俺の右手から鉛筆を取り上げ、スケッチブックに描いてある絵に、さらさらっと修正を施してくれる。
「俺のもついでに、見てもらえませんか? 西園寺先輩っ」
業を煮やした、クラスメートが話しかけると、ソイツのことを見ずに、分かったと事務的な返事をした。それでも嬉しかったんだろう。俺の顔を見て、右手親指を立てる。
ちゃっかりしたヤツだなと呆れ返りながら、背中にある西園寺先輩の体温とわずかな重みを感じるべく、目を閉じた。
耳に聞こえるのは、スケッチブックから聞こえる鉛筆を走らせる音と、西園寺先輩の息遣いだけ。ずっとこのまま、先輩の存在を感じていたいと噛みしめてしまった――
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