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最終話

僕の傷は減った あと 帰りたいと思う場所ができた また革靴の音が聞こえる 「先生」 先生は何か言いたい顔をしている そこで突然途切れた またか と思った ゆっくり目を開ける 三月の、最後 僕の胸には花がある 「早く帰ろう」 嘘なんかじゃなく 夢なんかじゃなく 先生は僕の名前を呼んでくれる もう生徒と教師じゃない 先生って呼ぶのも最後だ 「先生の家、行きたい」 「ほかにどこに行くんだよ」 そのスーツも横顔も手も 香も跡も 好きだから 「先生、」 大好きだ。

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