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業務内容
「カメリア芸能事務所の社長の椿です。以後よろしくね?」
そう言って社長は俺に名刺をくれた。名刺には「カメリア芸能事務所 代表取締役 椿」と書かれていた。椿さんの『椿』が苗字なのか名前なのかはわからないけれどなんだか業界の人っぽい…いや…業界の人なのか…
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私こういうものです。」
「あ、ありがとうございます…」
続いて社長さんの後ろに控えていた男の人とも名刺を交換する。そこには「カメリア芸能事務所 代表取締役専任秘書 山田輝明(やまだてるあき)」と書かれていた。そこでやっとこの人が社長の秘書なのだとわかった。
美形な人だったからてっきりこの人もモデルさんか何かなのかと思った…
そんな二人に見とれていると星野さんがお茶を持って来てくれた。星野さんにお礼を言ってありがたくお茶をいただくとホッとして緊張がほぐれていった。
「さて……本題だけど、あなたのことは大まかには和也から聞いたわ、アルの……頬付銀の元恋人みたいね…」
「はい…」
『和也』がイマイチピンと来なかったけどそういえば星野さんの名前がそうだったと昨日からからもらった名刺を思い出しながら返事をする。椿さんはそれを聞くと目を細めてなんだかよくわからない表情で俺を見た。
「……………先に言っておくけどアルに期待し過ぎない方がいいわ」
「……え…?」
突然の社長の発言に驚いてどういう意味かと聞こうとしたけれどその時にはすでに社長は秘書の山田さんから何かの資料を受け取っている所で聞くことができなかった。
期待し過ぎないほうがいい…?
少し引っかかったけれど結局話はそのまま進んでしまい、それについて聞くタイミングを逃してしまった。
社長は山田さんから受け取った資料を机の上に広げている。さっきの発言は気になったけど気を取り直してそれらに目を向けた。そこには昨日星野さんに見せてもらったアルの広告の写真や、なにやらいろんな文章もたくさんあった。うち1つに『診断書』と書かれたものもあって胸が痛んだ。社長が改めて口を開く。
「学、あなたの仕事はさっき言った通りアルの身の回りの世話とマネージャー業務よ。アルはその…ちょっといろんな面において奔放すぎるの、この業界でそれは致命的欠点になってしまうわ」
「……ちょっと…」
社長は怪訝そうな顔をする俺に親指と人指し指の間を狭めて見せて『ちょっとよ』と再度言った。
…………ちょっととは…?
「不特定多数の人と関係を持ってるのもイメージはよくないわ、和也からきいたけど、アルはそういう意味でもあなたのことを気に入ってるみたいね。」
「……そう…みたいです…」
恥ずかしくて顔が熱かったけれど素直に頷く。それを聴くと社長はふふっと色気たっぷりに笑ってなにやら満足そうな顔をした。
「あなたが『アルの世話』をしてくれたらとても嬉しいわ…」
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