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2時間の遅刻

翌日… 「……お、おはようございます…初日から遅れて申し訳ありません…」 「…んー…椿…おはよ…」 「!?」 未だに眠たげに目を擦るアルを引き連れて俺は社長室に来ていた。社長を「椿」と呼び捨てにするアルに酷く衝撃を受けるけど今はそれどころじゃない。時計はもう12時を回っていた。 10時にきてくださいって言われていたのに… 出社1日目から2時間も遅刻して胃がキリキリと痛んだ。 というか胃以外も痛い… 痛む下腹部や腰に顔をしかめながらこっちに背を向けて座っている社長へ頭を下げる。社長が何も言わないのが怖かった。脇で立っている山田さんは俺らが入ってきた時から笑顔を崩さない。 なにもかもこいつのせいだ… ふぁ〜あっと大きく口を開けてあくびをしながらTシャツをめくって腹を掻くアルを横目で睨む。でも当の本人は視線に気づいてすらいなくて口をむにゃむにゃさせていた。今朝のことを思い返してみる… まず昨日の夜の時点から問題はあったんだ…あんなドロドロの状態で放置されて…でもむしろまだそれだけならよかった… 『アルッ、起きて、アル』 『……Zzz』 『アル〜!!嘘だろ…せめて離して…』 散々俺にしたい放題して満足したアルは眠ったどころか俺にしがみついて爆睡していた。 大きな声を出しても、揺すっても、なんならちょっと叩いてみても起きなかった…おかげで俺は風呂にも行けず、中の処理もできないまま一晩過ごすことになった… でも、それでも朝起きて、風呂入って、後ろの処理をして、ご飯を食べるぐらいはできる時間にアラームをセットしたんだ、なのに次に目を覚ましたら10時過ぎてて… 思い出して頭が痛かった。後から発覚したけどアラームはアルが『うるさかった』という理由で止めたらしい。 こいつ寝起きも悪過ぎでしがみついたまま全然起きないし… 思わずため息をつきそうになるのを飲み込む。 でも…アルがそういうやつだからこそ雇われた『世話係』だ…起こせなかった俺が悪い… 何を言っても言い訳にしかならないとただ頭を下げて待った。すると『ふーん…』という声と共に社長が自身の腕時計を確認して『2時間…いいほうね』と呟いた。 い、いいほう…? そしてくるっとこっちを振り返って立ち上がった社長はにっこりと笑っていた。

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