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準備と練習

こうしてアルのインタビュー付き撮影に向けた仕事が始まった。 「アル、インタビューでは性生活に関わることは言っちゃダメだよ」 「…性生活に関わることって?」 「えっ、た、例えば…ほら…」 「………?」 「その…え…えっち…した…とか…そういうのだよ…」 「ふーん…なんで?」 「な、なんでって…」 アルはやっぱりちょっと感覚がズレてるみたいで何を言っていいのか、ダメなのかを教えるのに俺も星野さんも苦労した。あまり集中力も続かない質らしく練習もよく脱線した…… 「アル、ほら今日のは小さく刻んで野菜入れたから食べて?」 「えぇ〜…」 「あっ、野菜だけ器用に避けないで!」 「杉田さん…あーん…」 「俺に食べさせないで!!」 肌と体型のために健康的に生活させることも難航した。アルは野菜が嫌いでお菓子が好きらしく気に入らないメニューだとあまり野菜は食べてくれないし少し目を離すと深夜でも勝手にお菓子を食べていることがあった。唯一の救いはそんな生活をしていてもアルのルックスの良さは一向に揺らがないことだった。 なんか…銀の相手とはまた違った疲労感がある… こうして撮影までの毎日は過ぎていった… そして撮影の前日… 「あ、アル…あ、明日は緊張しにゃ……しないで頑張ってね…」 「…杉田さんのが緊張してるじゃん」 お風呂上がりのアルの髪を乾かしスキンケアをしてあげながら話す。これも俺の仕事の1つだった。 アルはお風呂の時間自体が異常に短い上に放っておくと全裸で、全身から水を滴らせてリビングのソファまで歩いてくる。その上そのまんま横になりだす…だから今は俺がお風呂から上がったアルの体を拭いて、髪を乾かして、スキンケアをしてあげるのが仕事だった。 初めはアルの全裸を堂々と見ることに抵抗があったけどなんかもう今は介護…っていうか育児の気分だ… でもアルはこうやって俺に触れられるのは好んでくれてるみたいで、スキンケアが終わるまでの間はじっとしていてくれた。 よし…おわった… 手に残ったクリームをタオルで拭き取ってアルの肩を叩く。アルは俺を見上げて終わったことを確認すると大人しくベッドに向かった。 それからアルと数日暮らして他にも思ったことがある。 アル、寝られるじゃん… アルが睡眠薬を使わないと眠れないという話を聞いた日、少しハラハラして夜を迎えたけれどアルは俺の心配とはよそに薬を飲む仕草も見せず、自分からベッドに入って布団に潜っていた。その後も毎日そうしている。 俺の心配しすぎだったんだよな…きっと… ふぅっと息を吐きながら俺も自分の家から持ってきたベッドに潜り込む。同じ部屋だけど別々のベッドに眠ることにも慣れつつあった。何重にもかけた目覚ましを再度確認してから電気を消す。 「おやすみアル。明日は頑張ろうね…」 「……ん…おやすみ…」

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