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6つの錠剤

「………」 「………」 アルは居心地が悪そうにソファに座ってもぞもぞしていた。恐る恐るといった感じで俺の様子を伺っている。 いつもは能天気そうなのに人知れずこんな風に悩んでたなんて知らなかった… 「……なんか…何日か前、なんでかよく眠れたからもう飲まなくてもいいのかなって思って飲まないでみたけどダメで……明日…大事みたいだし…星野さんも『たくさん寝れたらいいね』って言ってたし…」 言い訳する子供のような言い方でアルはそう言った。きっと『何日か前』っていうのは俺が来た日のことだろう。 ここ数日のことを思い返してみる。いつものことかと思って流してしまっていたけれどアルは眠たそうにしていることが多かったように思う。それに俺もここ数日慣れない環境で頑張っていたこともあって夜は疲れていてベッドに入るとすぐに眠ってしまっていた。だからアルの悩みに気づいてあげられてなかったのかもしれない。そう思うと罪悪感が募った。 「………」 「………」 アルとの間に沈黙が流れる。 アルのこと…たった何日か一緒に過ごしただけなのに、全部わかったようなつもりになってた…5年も離れてたのに、星野さんや社長が『アルによく好かれてるね』って言ってくれるからって都合よくアルのことよくわかってるみたいに勘違いしちゃって……アルにまで気を使わせてしまった… ぎゅっと心臓が縮むような感覚になって苦しくなる。でも今は反省してる場合じゃない。アルの不安を取り除いてあげたかった。 「………」 「…?」 何も言わずにそっとアルの隣に腰を下ろす。テーブルの上には沢山の薬の入ったシートが置かれていて、そこから出された錠剤が6つ転がっていた。あるの傍においてある袋にはその薬のシートが沢山入っている。 不安そうに俺をみるアルの手に触れる。 「…大丈夫だよ」 「………?」 「眠れないのも、だから眠るために睡眠薬を飲むのも変なことじゃないよ…」 「………」 アルの顔を見つめ、握ったアルの手を安心させるように揺すりながらそう言った。アルは一瞬きょとんとした顔をしたけどすぐにかおを背けて『…でも』と呟いた。アル自身、薬を飲むことに抵抗があるみたいだった。

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