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はじめてのお仕事
そして次の日…
「おはようございます。私カメリア芸能事務所でこちらのアルジェントのマネージャーをしております星野といいます。この度はこのような機会を設けていただきましてどうもありがとうございました。」
「お、おはようございます。わ、わた、私カメリア芸能事務所で…」
「杉田さん、そこは同じくで大丈夫だよ。」
「ッ!!す、すいません…あっ、お、同じく杉田学です!!きょ、今日はよろしくお願いします。」
「アルです、お願いします。」
俺は緊張で噛むわ、名前はフルネームで言うわ、ガチガチだわのまませめてもと頭を大きく下げて、アルは『こんちわ』と軽い感じで会釈をした。
星野さんがははっと苦笑いしながら『すいません、2人ともまだこの仕事に慣れていないもので…』とフォローを入れてくれる。
今日は待ちに待ったアルのはじめてのファッション誌の撮影の日だった。撮影の後にはインタビューも控えている。
アルはやっぱり容姿だけなら抜群に良いらしくスタジオに入った瞬間沢山の視線が集まり、沢山のほうっ…ってため息が聞こえた。
「それではこちらでお待ちください、今スタイリストのものが来ますので。」
「わかりました、ありがとうございます。」
そう言われ俺とアルと星野さんは控え室って言うのかな?小さな部屋に通された。案内してくれた女の人が出て行って部屋の中が見知った人だけになってやっと緊張が解けた。肩から力が抜けて思わずふーっと息を吐いた。その様子を見ていた星野さんに笑われる。
「杉田さんそんなに緊張しなくても大丈夫だよ。アルはもうちょっと緊張して欲しいけど…」
「……緊張?なんで?」
「…ま、まぁ…この仕事する上ではあがり症よりはましかな…?」
また星野さんが苦笑いする。当然のことだがこの仕事は人と沢山関わる仕事みたいである程度コミュニケーション能力がないとだめみたいだった。特にモデルと仕事現場の間をとりもつマネージャーにはそれが求められるみたいだ。さらに特にアルみたいなタイプにはそう言うマネージャーはかかせないみたい…
……大丈夫かな…俺…
ちょっとだけそれが不安だった。
「でもアル今日も顔色がいいし、肌も体型もファッション誌デビューに申し分なくて安心したよ。杉田さんのおかげだね。」
「いえ、そんな…」
「そんなことありますよ。肌と体型は…まぁ元から少し天性のもの感がありましたが…顔色や雰囲気は杉田さんと暮らし始めてずっとよくなったように思いますよ。」
星野さんがそう言って褒めてくれる。
アルは昨日の夜ぐっすり眠れたみたいで今朝の寝起きも普段より良かったように思う。例の怖い夢も見なかったようで普段のちょっとだけ神経質そうなトゲトゲした雰囲気が柔らかくなっていた。
少しは本当の意味で役に立てたのかな…
そう思うと嬉しかった。
「よかったね、アル」
「…ん」
星野さんに声をかけられてアルが頷く。アルは早速控え室にあったお菓子に手を伸ばしていて止めようか迷ったけど1つぐらいいいかなと思って放っておいた。
今日までちゃんと…ではないけど我慢してたもんな…
「ん、これ…あげる…」
「え、俺?」
「ん」
でもアルはカゴの中から選び出したお菓子を俺に渡してきた。それはアルの好きなマシュマロの挟まったお菓子だった。カゴに目線をやるけどどうやら1つしかなかったもののようだった。
「……いいの?」
「ん、昨日の嬉しかったし…」
アルはそう言ってそれをくれた。
天使パイ…
パッケージにはラッパを持った天使の絵が書かれている。なんだかアルに少し近づけた気がして胸があったかくなった。
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