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アルらしさ

「う〜ん、アルちゃんもうちょっと自然な感じにできなーい?」 「自然な感じ…」 撮影は難航していた。休憩が終わって星野さんがアルに休憩中ピエールさんと話していたことを伝えていたけれどアルにはピンとこなかったらしく、未だにこれと言える一枚が撮れないでいた。アルはアルでどうしたらいいのかが分からず困っているようだった。 「……どうします…?もう一度休憩挟みます?」 「そうねぇ…じゃあ10分だけ」 こうして再度休憩に入ったけれどスタッフさんたちにも疲労の色がみえていた。ピエールさんと星野さんは再度モニターの前で雑誌の人たちなんかも交えて何かを話し合っている。アルも今度はこっちにには戻ってこずセットのベンチに座ってぼんやりしていた。タオルを持ってアルに近づく。 「お疲れ様」 「……ん…」 アルは短くそう返事をしてタオルを受け取ったものの疲れもあるみたいでそれ以上は何も話さなかった。心配になってこちらからも声をかけてみる。 「……大丈夫?」 「……杉田さん…オレ良くない…?」 「え…」 「前の時、今日みたいにやったらみんないい感じだねって言ってた…でも今日はダメって」 「ダメなんじゃないよ、ただ…みんなアルならもっといい写真が撮れるんじゃないかって思ってるだけだよ。」 「………」 アルは何も言わなかった。なんとなくアルの隣に腰を下ろす。アルには銀とは違った儚さみたいな…脆さみたいなものがあるような感じがしてちょっと心配だった。 …あ、そうだ 「アル、ほらこれアルがさっきくれたおやつだよ、食べない?」 「…いらない……それにそれ杉田さんにあげたやつだし…」 「…じゃあ…俺が食べたいからあけるね?一個は多いからアルも半分食べてよ」 「………」 そう言うとアルはそれ以上は拒否しなかった。控え室でアルにもらった天使パイを開け、半分にして片方をアルに渡す。 「今日はさ、この間のとは違って『アルの』写真が撮りたいんだよ、カッコいいポーズとか表情とか…そういうのも大事なのかもだけど多分なんかもっとアルらしくしてればいいんだよ」 「……オレらしく…オレらしくって…?」 「…うーん…天使パイ美味しそうに食べてたり、なんだかちょっと眠そうにしてたり、ちょっとわがままだったりするところとかかな…?」 「…なにそれ」 俺の答えにアルはえー?と首を傾げたけれどその顔は少しだけアルらしいものな感じがした。アルがやっと手に持っていた天使パイを口に運ぶ。いつもみたいに口いっぱいに頬張っていた。それを食べ終えたアルがふにゃっと顔を綻ばせる。 「…おいしい」 「それはよかった、アルほっぺにチョコレートついてるよ」 「………」 手を伸ばしてアルの口の端についたチョコレートを拭ってやる。アルは黙ってじっとしていたけど何かを見ていることに気づいてアルの視線を追ってパッと顔を上げた。

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