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いい写真
「……マナブちゃん…アルちゃん…」
「…えっ…」
「うぇ…」
アルの視線を追って目線をあげると胸の前で両手を握り、体を震わせて、サングラスで実際は見えないけど目をうるうるさせつつ高速でシャッターを連打するピエールさんがいた。アルがうえぇと顔をしかめている。ピエールさんの横には嬉しそうな顔をして小さくグッジョブマークを作っている星野さんもいて、よく見ると周りでスタッフの人たちも固唾を呑んでこっちにライトをあてたり白い板?みたいのを向けたりしていた。全員の顔がにまぁっと嬉しそうになっていく。現場には良く聞くとカシャカシャカシャカシャっとシャッターをきる音が響いていた。そこで俺はアルとの一連の流れを見られていたことに気づいた。しかも写真まで撮られて…かぁっと顔が熱くなっていくのを感じる。
「…っな…!!」
「んもぉ〜最高よマナブちゃん!!何したの!?最高にクる写真がとれたわよぉーう!!」
俺がやっとの事で声を出すと同時にピエールさんが大きく跳躍して俺のすぐそばまでやってきて、俺を抱きしめてぐるんぐるんと振り回した。ピエールさんの背が高くて足がつかない。
め、目が回る…
そしてピエールさんが寄ってくると同時にわっとほかのスタッフさんも近づいてきたのが見えた。
「アル!!杉田さん!!すごいよ!!文句なしのとってもいい写真が撮れたよ!!」
「べ、別に…俺は…」
「ううん!!すごいよ!!ほら!!こっちにきて一緒に写真見てみて!!」
興奮気味の星野さんに引っ張られてやっとピエールさんから解放された。でも今度はフラフラなままモニターの前に連れて行かれる。ピエールさんは今度はアルに絡み始めたみたいでアルの呻くような声が聞こえた気がした。
「ほら!!これだよ!!」
「……!!」
まだクラクラする頭を振って星野さんに示されたモニターに目をやるとハッとした。クラクラしていた頭が一気にはっきりするようだった。
「どう?」
「……すごい…」
素直にそう声に出た、そこには俺と話してたアルの写真が写っていた。無邪気そうな表情で首を傾げるアルや、頬いっぱいに天使パイを頬張ってるアル、ふにゃっと柔らかく笑うアルに俺の手が頬に添えられていてうっすら口を開きその少し冷たいような視線だけをカメラに向けるアルも写っている。その後ピエールさんたちに気づいてうえっと顔をしかめるアルもコマ送りみたいに撮られていた。先ほどまでの写真みたいな雑誌っぽさはなかったけれど、アルらしさが良く出たいい写真だと思った。
「……素敵ですね…」
「でしょ!?でしょ!?」
星野さんは嬉しいらしく顔を輝かせてぴょんぴょん小さく跳ねていてなんていうかちょっと可愛らしかった。
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