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アルの成長

「アルにこんな顔させれるなんてすごいよ杉田さん!!杉田さんが一緒に仕事してくれてよかった!!」 「そ、そんな…」 星野さんはこれでもかってぐらい褒めてくれた。俺の手を取ってブンブンと上下に大きく振っている。 スタジオはなんだか異様な熱気だった。後から説明してもらって理解したけどみんなどうやらもうアルのいい写真を撮るのは無理だと思っていたみたいだった。こういう業界に勤めている人たちだから、みんなアルは今が売り込み時でこの撮影で撮られる写真の良し悪しで今後が決まるようなものだとわかっていたらしい。容姿がバツグンにいいから絶対にモデルで成功できるはずだと息巻いてみんな仕事に臨んでいたのに実際思ってたよりいい写真が撮れず、せっかくの才能…というか類稀な容姿の良さをふいにしてしまうと落胆していたようだ。でも最後の最後に期待通りの写真が撮れたからこの盛り上がりらしい。 「……はぁ…」 「あ、アル…」 いつの間にか俺の後ろにげっそりした感じのアルが来ていた。背後ではまだピエールさんが荒ぶっていてそれから逃げてこちらに来たようで疲れているように見えた。 俺らが見ていたモニターを見て首を傾げている。 「良かったね、みんないい写真だってよ?」 「……こんなのがいいの…?」 そう声をかけてみたけどアルにはイマイチピンと来ていないようだった。ふうんとは言っているものの不思議そうな表情を浮かべている。続けて星野さんも口を開いた。 「ATEの時とは雰囲気が違うから少し混乱させたかな?でも最高の写真だよ、ほらこれからインタビューもあるんだからメイクと髪型直してもらっておいで。」 「えぇ…まだ写真も撮るの…?」 「インタビュー中の写真も取られるよって説明したよね?」 「聞いてな…」 「言いました。」 星野さんが有無を言わせずそう言ってアルをスタイリストさんに引き渡した。みんな晴れ晴れした様子で、そこに少しでも貢献できたと思うと嬉しかった。 「やったね、杉田さん。初仕事無事に終われそうだね、それにこれからも一緒に仕事できそうで嬉しいよ。」 「あ、ありがとうございます!!でもまだインタビューありますけどね…」 「大丈夫だよきっと、あんなに練習したし…それに今のアルならうまくやってくれそうだなって思うんだ。」 星野さんはアルの成長も喜んでいるようだった。こうして俺と星野さんは少し安心した気持ちでアルのインタビューを遠巻きに見守っていた。

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