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テレビのお仕事

「え…テレビ…?」 「そうよ」 ある日星野さんと二人で社長室に呼ばれたかと思うとそんなことを告げられた。ちなみにアルは今休憩室で山田さんと休憩中だった。 「少し前にテレビCM用のATEの撮影があったじゃない、それに合わせて放送されるバラエティ番組よ。ある意味宣伝の一環ね、ドラマの番宣みたいなものだわ。」 「………」 実は、以前のATEの広告が大変人気だったらしく同じテーマとコンセプトでテレビ用のCMが放送される事が決まっていた。すでにその撮影は完了していてアルも出演したのだが前回同様メインは女優さんなのでアルにセリフはなく、動きもほとんどないものだった。なので、アルも俺たちも普段の雑誌撮影とあまり大差ないもののような認識で仕事ができた。でも今回はバラエティ番組となると話は違う。 …アル…バラエティ番組なんて大丈夫なのか…? こういう部分の判断が自分ではまだうまくできず何か助言を求めるように隣の星野さんを見た。 「て…てれび…」 「……?ほ、星野さん…?」 星野さんの顔はパァッと輝いていた。その顔を見ただけでもはや出す気満々なんだなという事がよくわかった。きっと今星野さんの脳内では星野さん理想のアルがテレビ番組で活躍する様子のプレビューが再生されているんだろう。そして星野さんはハッとすると社長にガバッと頭を下げた。 「お願いします!!是非やらせてください!!」 「っちょ…星野さん、アルにも聞いてからじゃないと…」 「テレビ…これでアルの印象を修正できれば…」 星野さんの頭の中はもはやテレビ出演のことでいっぱいみたいだった。ははっと苦笑いしながら社長と目線を合わせる。結局この話はアルに確認をとってみてからにはなるが前向きに検討されることになった。

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