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もやもや
「…テレビ…?」
「そう!!ゴールデンじゃないけど12時前の番組だし…きっとイメージも変えれるよ!!」
「……ふうん…」
星野さんの力説に反してアルは特に興味を示している様子はなかった。もうすでに山田さんとしていたオセロの方に意識を戻している。
まぁ普段の仕事も興味は示していないのでいつも通りといえばいつも通りなんだけど…
アルは机の上のお菓子をつまみながらパチパチとオセロをひっくり返していた。
「ね?ね?アル?出るよね??」
「……別にいいよ…」
「えっ!!本当!?やったぁ!!」
星野さんは必死な感じだったがアルが許可…というか返事をすると顔を輝かせて飛び上がって喜んでいた。これからまだテレビ収録以外の仕事もあるというのに本人以上に張り切っていた。アルは相変わらず普段と変わらない。
………アルわかってるのかな…?
そしてその日の夜…
「アル、今日のお昼の…テレビのことだけど大丈夫?」
「……?…なんで?」
「いや…なんとなく…」
お風呂上がりのアルの髪にトリートメントをして乾かしてやりながらそう聞いてみた。アルはお風呂上がりのアイスを幸せそうに食べながら首を傾げている。アルにとっては今までの仕事もテレビもそんなに大差ないと思っているのかもしれない。実際俺もなんだかんだ言って自由に喋るバラエティ番組は案外アルに向いてそうな気がしていた。
最悪、よっぽどやばいこと言ったらカットしてもらえるから大丈夫って星野さん言っていたし…
それなのに逆に何をこんなに不安に思っているかよくわからなかった。アルに質問した俺自身も首をかしげる。テレビ出演なんてアルの仕事がうまくいっていて、その助けになれている証拠なのになんだか胸にモヤモヤ感が残った。
「ねぇ…」
「…どうしたの?」
自分の気持ちがよくわからなくなりながらアルのスキンケアを終え、手をタオルで拭っていたらアルに声をかけられその声で我に返った。アルがこっちを上目遣いでみてくる。ちょっとだけ目が潤んでいて、その目をしょぼしょぼさせながら、くあっとあくびをしている。
あ、眠いんだな…
「……一緒に寝る?」
「うん」
アルはあれから俺と一緒に寝るようになった。エッチがある日もあるし、ない日もあるが今日はアルが眠いみたいだからなさそうでホッとする。俺と一緒だと怖い夢を見ないからとアルが言っていた。アルが頼ってくれるのは素直に嬉しい。
ある程度片付けと準備を終えてベッドルームに行くとアルが先にベッドで待っていた。アルは俺の胸に顔を押し付けて眠るのがお気に入りらしく、今日も隣で横になると寄ってきてちょうど胸の位置に顔を寄せてきた。いつもみたいにそこで何度か深呼吸をしている。まだ慣れなくてちょっと恥ずかしいけれど『んん〜…』と唸りながら体を寄せてくるアルが安心したようにくてっと力を抜く瞬間を見ると役得だなと思う。
「…おやすみアル」
「おやすみ杉田さん」
まだうっすら胸のモヤモヤは残っていた。
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