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わからない気持ち
無事…ではないかもしれないけどとにかく収録が終わって家に帰ってきた。本当に予想外でひどく驚いたけど、翔さんにも再会できてなんだか浮き足立っていた。晩御飯を作りながらソファに座っているアルに声をかける。
「……それで連絡先交換したんだよね。アルだって会ったことあるんだよ?」
「………」
「すごいよね〜、美容室で働いてる時に声かけられてうまくいけばショーとかのヘアメイクも任せてもらえたりするんだって。」
「………」
こうやってアルに翔さんと話した内容を聞かせていた。高校の時に深く関わったわけじゃないけれど銀もあったことがある相手だし、もしかしたら記憶が戻るきっかけになるかもしれないとも思った。
あ…そういえばご飯にも誘われてたんだった…
「あ、そうだ、それでさ翔さんが今度3人で一緒にご飯食べようって」
「……は…?」
「翔さん、アルとも話したいって、アルももしかしたら何か思い出せるかもしれないしさ…週末どう?夜仕事ないし…何食べたい?」
「………」
この食事も翔さんが提案してくれたものだった。昔のこととか話してたらもしかしたら思い出すかもって…
俺以外の誰かがアルの記憶を戻すことについて話してくれたのは初めてで嬉しかった。
アルも美味しいもの食べれるの嬉しいだろうしきっと来るよね…
断られるなんて思わなかった。なかなか答えないアルに首を傾げて見せたけどアルはなぜかプイッとそっぽを向いてしまった。
「…………オレ行かない…」
「えっ!?なんで?なんか予定あった?」
「………ない…けど行かない……オレあいつ嫌い……」
アルがそんなこと言うなんて思ってもみなかったから驚く。しかもアルは翔さんのことを嫌いとまで言った。
そんな……別に何かされたわけでも…っていうかそもそも会話自体してないに等しいのに…
アルは猫のぬいぐるみを抱いてそっぽを向いて目を合わせようとしない。
「……アル、そんなこと言うなよ……覚えてないんだろうけど…お世話になった先輩なんだよ…?」
「………そんなん知らないし…」
「うん……だから話したりすればさ、思い出せるかもしれないじゃん…」
アルはやっぱり目を合わせてくれない。アルがなぜ急にこんな感じになってしまったのかわからなくて困惑した。
「……ねぇアル…?」
「………知らない…」
「………」
「オレ行かない……杉田さん、そんな行きたいなら一人で行けばいいじゃん…」
「………はぁ…わかったよ…」
アルは頑なで理由を教えてくれそうにはなかったし目すら合わせてくれなかった。
………せっかくいい機会だと思ったんだけど…うまくいかないな…
仕方なくキッチンに戻って料理を再開する。アルが何を考えてるのかがわからなくて辛かった。
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